三熊野神社大祭みくまのじんじゃたいさい

JR東海道本線・東海道新幹線掛川駅から南へ約10km、江戸時代は横須賀藩の城下町だった横須賀に三熊野神社*1がある。三熊野神社の創建は701(大宝元)年といわれ、神事祭礼は熊野信仰にしたがって行われてきた。
 江戸時代に入り、踊りを中心とした祭礼も始まったといわれるが、現在の形式の原型が生まれたのは享保年間(1716~1735年)頃だといわれている。当時、江戸幕府の老中も務めた14代横須賀城主西尾隠岐忠尚が、江戸天下祭(神田・山王両祭礼)の様式をこの地に伝えたという。その後、天保4(1833年)年頃には、祢里(ねり)*2と呼ばれる山車も含め、現在の形式に近いものになったとされる。                                                                                       
 大祭は毎年4月第1週金・土・日の3日間開催される。江戸天下祭の流れを汲む13台の祢里が、「三社祭礼囃子」*3とともに城下町だった町並みを練り歩く。祢里の上では「ひょっとこ」や「おかめ」が舞い踊り、江戸町火消し装束の若衆が、「シタッ!シタッ!」の掛け声をかけながら曳き回す。3日間の祭礼は揃ではじまり、夜祭り、祢里供奉順くじ引き、三社祭礼囃子演技奉納祭、子授けの神事、神輿渡御、祢里供奉行列、地固め舞*4、田遊び*5と神事が行われ、3日目の夜、祢里のすべてが境内に集まり千秋楽*6が行われる。
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みどころ

1日目の揃えは各町内で祢里が準備され、自町中心にお披露目の巡行。                                    
 2日目は、自町内巡行の後、神社境内に集合し、当番町によるひょっとこやおかめの踊りとともに三社祭礼囃子の奉納が行われる。踊り手たちのひょうきんな動きが面白い。各町内でもお囃子の披露がされ、夜祭りでは、提灯を灯し照明に浮かび上がる祢里が町内を曳き回され幻想的な風景となる。                                                             
 3日目の神輿を供奉した祢里供奉行列は、町内全体を巡行し、祢里が行き交う。通りでのすれ違い、譲り合いでの独特の作法も興味深い。13台の祢里は下部は花の飾りが取り付けられ、上部天辺には個性的で物語性のある人形や風景を模した飾り付けがなされているので、見飽きることはない。夜の千秋楽は、境内に13台の祢里が再び参集し、勢揃いしたあとに訪れる一旦の静寂、そして、締めの手拍子とともに始まる喧騒と熱気のフィナーレは、この祭の最大のみどころだ。
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補足情報

*1 三熊野神社:当社の由緒によれば、701 (大宝元)年の創建で「熊野三社即ち熊野本宮大社を当横須賀の地に、熊野那智大社を 小笠山(現小笠神社)、熊野速玉大社即ち新宮を高松(現高松神社)の地に遷座された宮 」だという。祭神は家津美御子神、伊邪那美神、事解男神。
*2 祢里:一本柱万度(2輪主柱1本)型という古い型式の山車で、すでに廃絶しているところが多い。祢里の上部天辺には、町毎に異なるテーマで飾り付けがなされている。それぞれの町のテーマは、旭組・西新町(二見ヶ浦)、に組・西田町(鞍馬山)、せ組・大工町(稲村ヶ崎)、め組・東新町(日の出に鶴)、た組・東田町(五條大橋)、か組・河原町(川中島)、ゑ組・軍全町(大森彦七)、み組・西大渕(南総里見八犬伝)、い組・西本町(太田道灌)、は組・中本町(高砂)、ち組・拾六軒町(おろち退治)、あ組・新屋町(神功皇后)、ろ組・東本町(司馬温公)とめでたい場所や英雄、伝説が選ばれている。 
*3 「三社祭礼囃子」:道中囃子は、「大間」、「屋台下」、「馬鹿囃子」の3曲と、役太鼓として「昇殿」、「鎌倉」、「四丁目」の3曲からなる。このお囃子は横須賀城主西尾忠尚によって、当時江戸で流行っていた江戸囃子に新手を加え、もたらしたものといわれている。
*4 地固め舞:7人の若者が木太刀や弓矢などの道具を使い、謡いに合わせ舞い、大地の悪霊払いをする儀式。大祭のもっとも重要な神事のひとつ。                                                                      
*5 田遊び:美田を称え、豊穣豊作を祈願する儀式。地固め舞と同様、大祭でもっとも重要な神事のひとつ。                 
*6 千秋楽:神輿を供奉して町内一巡した13台の祢里が再び境内に戻り勢ぞろいし、千秋楽の儀式を待って掛け声やお囃子などがやみ神事が終わると、手拍子とともにお囃子が再開されクライマックスを迎える。
関連リンク 掛川市(WEBサイト)
参考文献 掛川市(WEBサイト)
掛川市(WEBサイト)
三熊野神社(WEBサイト)
文化遺産オンライン(文化庁)(WEBサイト)

2023年11月現在

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