前山寺ぜんさんじ

上田市街の南西約8km、独鈷山麓にある。空海が開き、鎌倉時代に讃岐国善通寺からの長秀上人が発展させたと伝えられる。この地を治めていた塩田北条氏*の祈祷所でもあった。
 境内には大イチョウを前景に、室町初期の三重塔が立っており国の重要文化財となっている。また、藤をはじめ数々の花の名所としても知られている。
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みどころ

国の重要文化財にも指定された三重塔があり、境内は季節のうつろいとともに、桜をはじめとする花々が咲き「花の寺」とも呼ばれている。三重塔は「未完成の完成の塔」と呼ばれ、二、三重の柱に窓も扉もなく、また廻廊も勾欄(こうらん)*もなく、ただ長い胴貫が四方に突出して、変化と調和を持たせている珍しい塔になっている。
 冠木門からは欅の美しい参道が100m続き静寂さを感じさせ、薬医門をくぐると厚さ4尺の茅葺の本堂が堂々とした美しい姿を見せる。石の階段を上ると三重塔や明王堂があり、南側に開けて塩田平、上田市街を一望できる。その座敷にて名物の鬼ぐるみのおはぎ(750円)がいただける。(4月1日~11月30日木・金曜定休・要予約)(林 清)
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補足情報

*塩田北条氏:鎌倉幕府の執権北条泰時の弟重時は信濃国守護となったが、その子義政は自ら塩田に入り、塩田北条氏を名のった。以来、国時、俊時と3代つづいたが、鎌倉幕府とともに滅びた。
*勾欄:回廊・廊下などにつけた欄干のこと。