久保田一竹美術館くぼたいっちくびじゅつかん

富士急行線河口湖駅から、北へ河口湖の湖岸に沿って約5km、河口湖もみじ回廊の奥にある。久保田一竹*1は、室町時代に隆盛し、江戸時代初期には衰退していた染色技術「辻が花」*2を1962(昭和37)年に復活させ、独自の工夫を加え、独創的な「一竹辻が花」を生んだ。久保田一竹美術館は1994(平成6)年に開館し、この技法で染めた着物などの作品100点以上を収蔵し、展示している。1997(平成9)年には新館も開設している。
 作品展示室のある本館はヒバの大黒柱16本を使用したピラミッド状の木組みの建物(高さ13m、床面積200㎡)で、その中央の舞台と壁面に富士をテーマにした作品や代表作を展示している。本館には庭園の滝を見ながら抹茶などを楽しめる茶房、新館には久保田一竹の「蜻蛉玉」のコレクションを展示するギャラリーやミュージアムショップ、富士山を眺望できるカフェなどがある。
 また、本館の裏手には、自然を活かした新緑や紅葉が美しい庭園*3が広がり、散策が楽しめるようになっている。
入館有料。
#

みどころ

小川沿いにある「河口湖もみじ回廊」を抜けた先、少し高台になったところにあるインドの古城を思わせる門をくぐると、正面に滝が設えられ、もみじが植えられている。新緑や紅葉時はとくに美しい。さらに坂道をのぼると、美術館の入口となる。新館側から入ることになるが、まずは本館に直行したい。本館はピラミッド状の木組みの大きな建物で、中に入ると天井の高さと木組みの巧みさに驚かされる。作品は、季節や時間によって様々な色合いを見せる富士を着物に染め上げた作品などを中心に展示し、その制作過程を紹介する映像も流されている。この「一竹辻の花」の染色技法がいかに手間がかかり、繊細な作業かが、作品を見ても、映像を見てもよく理解できる。
 本館のあとは、裏手に回り、自然を生かした庭園を散策するのをお勧めする。とくに紅葉期は、落葉で庭一面埋め尽くされ、まさに染め上げられたようで見事。
#

補足情報

*1 久保田一竹:1917(大正6)~2003(平成15)年。染色家。14歳で染色の道に入り、20歳で「辻の花」の染色技法に出合い、独自の技法「一竹辻の花」を生涯を通じ確立した。
*2 辻が花:縫締絞りの技法を主とした文様染めで、江戸初期には多色を自由に使い、絵画技法を取リ入れた「友禅染め」が出現したことにより、衰退したとも言われている。
*3 庭園:2001年に完成。建仁寺の枯山水庭園など手掛けた北山安夫の作庭。富士の溶岩や豊富な湧水を使い、自然の地形を巧妙に取り入れている。庭園内に久保田一竹が亡母を偲んで普賢菩薩などを祀った「慈母像窟」もある。また、正面玄関前にも「大滝」を中心とした庭園が設けられており、こちらは無料で鑑賞できる。