下部温泉しもべおんせん

JR身延線下部温泉駅周辺と下部川沿いに宿泊施設があり、温泉街は駅からは1kmほど上流にある。
 下部温泉の発見は、景行天皇の代の甲斐国造塩海足尼だとする説もあるが、江戸後期の「甲斐国志」では、熊野神社の「祠記ニ據ルニ承和三丙辰年(837年)熊野ノ神此ニ現出シ温泉湧出」したとし、その後「天正年中(1573年~1593年)穴山梅雪之ヲ再修シ」たという。また、泉温・泉質・効能*については「微温浅澄」で臭気も立たず、「金瘡折損外傷」、「癬疥諸瘡」に良いとしている。武田二十四将だった穴山梅雪が温泉の再修に関わっていたことや刀傷など外傷に効能があったことなどから、「信玄の隠し湯」として伝えられている。
 下部温泉駅から下部川に沿って湯之奥金山博物館*や足湯、共同浴場の温泉会館、温泉病院などがあり、さらに先に進むと鄙びた温泉街が続き、旅館や土産物店、飲食店が軒を連ねている。静養、療養客も多く、湯治場らしい雰囲気も残している。
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みどころ

近代的な温泉旅館もあり、身延山などにも便利なので観光目的の来訪者が中心だが、ぬる湯が特色で療養温泉として長期間滞在する湯治客も多い。
 岩風呂の底から湧く源泉は、本来的な温泉気分を味わうことができ、ぬる湯、冷泉などでじっくり楽しみたい。
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補足情報

*泉温・泉質・効能:泉温は、20度から30度台の源泉が多い。泉質は、ナトリウムおよび硫酸イオンを主要成分とする、弱いアルカリ性の単純温泉。動力揚湯もあるが、自噴泉を有する宿では岩風呂の底より湧出している。冷泉と温泉に交互に入る入浴法を勧める宿もある。また、2005(平成17)年には、温泉街から下部川の1kmほど上流で湧出温度51℃の新たな泉源を発掘し、宿泊施設などに配湯している。
*湯之奥金山博物館:下部温泉よりさらに下部川の上流の毛無山中腹には、武田信玄公のかくし金山と言われる湯之奥金山があり、山中には金山衆を中心とした大集落があった。博物館には、湯の奥金山からの出土品や鉱山道具などが展示されているほか、砂金採り体験もできる。