白米千枚田しろよねせんまいだ

輪島の東、曽々木への国道沿いにある。山裾が落ちこむ海に面した斜面3.8haに1,004枚の小さな小さな田が段々に並び、あぜが美しい模様をつくっている。平野の少ない輪島は急傾斜地が多く、昔から地滑りに悩まされてきた。それでも、この土地は用水源が確保されれば、地味が良く適当な日当たりがあり、良質のコメが採れたため、田んぼを作るために幾つにも斜面を分けて作り続けた結果、1879(明治18)年には田の数がおおよそ8,000枚にものぼったという。数が多いので千枚田と呼ばれるが、最も小さい水田は0.2m2と非常に小さいことから、「狭い田」から転じたという説もある。 1638(寛永15)年頃に作られた谷山用水が利用されているが、農業機械が入れないため、農作業は人の手で行われ、2014(平成26)年に田に種を直にまく日本古来の農法「苗代田」を復活させている。1970(昭和45)年前後から耕作者の高齢化と後継者不足で徐々に休耕田が増えて、農地の荒廃が進むようになった。それに対し、美しい景観を残していこうという市民ボランティアが立ち上がるとともに、景勝保存基金も設立され、2001(平成13)年に国の名勝に指定された。2007(平成19)年にはオーナー制度*も導入された。
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みどころ

世界農業遺産*に認定された「能登の里山里海」のシンボルにもなっている風景である。水平線上に浮かぶ七ツ島を借景として海へ流れ込むように田が連なる風景は、ゆらぎのある幾何学模様を描いており、日本の棚田を代表するものといえる。春は水田、夏は青田、秋は稲穂、冬は雪景色と四季折々の風景が美しい。隣接する「道の駅千枚田ポケットパーク」から千枚田を一望できる。また、田んぼ沿いの散策路を歩くこともできる。
2011(平成23)年からは10月中旬から3月初旬に「あぜのきらめき」が行われている。このイベントは、独自開発され「ペットボタル」と名付けられた2万5,000個の独立型太陽光発電LEDが、稲刈りを終えた畦道に置かれ棚田を美しく飾るイルミネーションイベント。日没から4時間程度、15分ぐらいでピンク→グリーン→ゴールド→ブルーへと変化する幻想的な世界が広がる。
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補足情報

*オーナー制度:白米千枚田の景観を守るためにスタートし、稲作体験を通じて先人の苦労、生産の喜び、米一粒の大切さを理解するとともに、会員及び地元農家の方との交流を大切にする制度。オーナー会員とトラスト会員、企業会員がある。
*世界農業遺産:Globally Important Agricultural Heritage Systems(GIAHS)。食料の安定確保を目指す国際組織「国際連合食糧農業機関」(FAO、本部:イタリア・ローマ)によって開始されたプロジェクトで、近代化の中で失われつつあるその土地の環境を生かした伝統的な農業・農法、生物多様性が守られた土地利用、農村文化・農村景観などを「地域システム」として一体的に維持保全し、次世代へ継承していくことを目的としている。