手取峡谷てどりきょうこく

鶴来地域から山間部に入ると、手取川は狭い河岸段丘下に深い谷をなし、中流域の黄門橋~対山橋間約8kmにわたって高さ20~30mの絶壁が続く峡谷美をつくっている。清冽な流れは淵となり、瀬となり、幾条もの滝が白い飛沫を上げて岩壁を滑り落ち風情を添える。おもな景観に、黄門(こうもん)橋・御仏供杉(おぼけすぎ)・不老橋・綿ヶ滝、対山橋などがある。とくに落差32mの綿ヶ滝は、水しぶきが綿が舞うように見えることから名付けられたといわれ、峡谷下におりられるため、豊かな水量が流れ落ちる様子を間近に見ることができる。鶴来から道の駅瀬女間の19.6kmに、北陸鉄道金名線の廃線跡を利用して手取川沿いに自転車道「手取キャニオンロード」が整備されており、手取峡谷や綿ヶ滝の景観を楽しみながらのんびり走ることができる。また、手取峡谷の下流には夫婦岩*や明神壁*、弘法池*、上流には百万貫の岩*などの奇岩や湧水がある。なお、白山市全域は「白山手取川ジオパーク」として、2023(令和5)年5月に国内10エリア目のユネスコ世界ジオパークに認定されている。
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みどころ

手取川は、白山に源を発し日本海に注ぐ石川県最大の河川であり、日本有数の急流河川とされ、洪水被害に悩まされてきた。このため、洪水調節と都市用水(水道、工業)と水力発電を目的とした手取川ダムが1980年に建設されたが、中流域には、現在も河岸段丘とのその上に分布する水田や集落の景観が美しく、また、滝がところどころにみられる美しい峡谷が存在する。とくに「綿ヶ滝」*は、峡谷の中腹まで降りて落下する様子を身近に見ることができ迫力ある景観を楽しむことができる。また、黄門橋や不老橋の橋上からは峡谷美と周辺の自然景観が味わえるほか、「手取キャニオンロード」沿いにある展望台からは綿ヶ滝や峡谷の様子が遠望できる。鶴来地区の白山市観光連盟などにはレンタサイクルも用意されている。黄門橋近くの「吉野工芸の里」には観光情報センターもある。
 綿ヶ滝を含む手取峡谷沿いは、県立自然公園となっており、探勝にあたっては周辺環境を含めて自然保全に十分留意する必要がある。
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補足情報

*夫婦岩:手取川の浸食により作られた奇岩。川の中央に2つ並ぶ様子から夫婦岩と名付けられている。
*明神壁:若原地区の集落内から40分程度の登山道を登ると、山腹に飛び出した岩場があり、明神壁と呼ばれている。岩上にロープをつたい登れば、手取川中流域と谷の奥にそびえる白山の景色が素晴らしい。
*弘法池:黄門橋の近くにあり、直径約50cmほどの甌穴で2m近い深さの底から清水が湧いている。弘法大師が当地の人情の厚さを喜び、水の不便な当地のために、錫杖を地に刺したところに清水が湧いたという伝説がある。その形から「釜池」とも呼ばれている。
*百万貫の岩:1934(昭和9)年の大洪水のときに流れ出た、重さが百万貫はあるだろうとされる巨大な岩。水の威力を体感できる。
*綿ヶ滝:滝の近くまで降りるために急で滑りやすい階段を昇降しなくてはならない。また、峡谷の岩場も滑りやすいので注意が必要である。