九十九湾つくもわん

深い入り江が大小九十九もあるとされこの名がついたといわれている典型的なリアス式海岸*の小湾である。江戸時代中期に著わされた「能登名跡誌」には、「風景日本の三景にもひとしき處也。誠に風景仙境共云つべし。」とあり、古くから景勝地とされていた。東西1km、南北1.5kmの小さな湾の中に入り組んだ延長13kmにもおよぶ海岸線には赤松が生い茂り、波静かな水面に緑を映して箱庭的な美しさを見せる。湾の中央には鬱蒼としたスダジイに覆われ、松や桂樹など100種以上の暖地性植物が繁茂し、あたかも蓬莱の画図を見るようであるとして名付けられた蓬莱島(ほうらいじま)が浮かび弁天様が祀られている。湾口の日和山は自然公園になっており、湾内や立山連峰の展望台で、その南には遠洋漁業の基地として賑わう小木港がある。周辺の海は水の透明度が高いことなどで海中公園の指定をうけており、湾1周の遊覧船が巡っている。湾の西側にある「のと海洋ふれあいセンター」周辺の海岸に、飛石と床板を組み合わせた自然観察歩道(総延長約800m)が整備されている。場所によって波当たりの強さが違い、潮だまりができる場所など、変化に富んでおり、生きものとふれあい、観察することが出来る。
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みどころ

遊覧船*に乗れば船の上から景色を楽しめるとともに、グラスボートで船底から海中の様子を見ることができたり、途中で立ち寄る生簀場で魚の餌付けをしたりできる。沿岸部に整備された周遊観察路では散策を楽しみながら景色を眺め、海の生き物を観察することもできる。
 海(浅海、潮間帯、海岸)の自然に関する調査研究と普及啓発を行う「のと海洋ふれあいセンター」には、九十九湾の生きものを直接手にとって観察できるタッチプールや立体映像(3D)が楽しめるマリンシアターの他、スノーケリングをはじめとした様々な海の体験プログラムを提供する「海の自然体験館」がある。また、2020(令和2)年6月に、レストラン、販売所、遊覧船を有する「のと九十九湾観光交流センター イカの駅つくモール」がオープンした。ここでもカヌーやサップ*など、マリンレジャーの用具の貸出しやガイドを行っている。
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補足情報

*リアス式海岸:浸食された山地が沈降などによって出入の多い海岸線となったもの。
*遊覧船:遊覧船は4~11月に運航しているが、船底がグラスの船のものと魚の餌付けを楽しめるものとでは乗り場や料金が異なる(詳細は管理主体に問合せ)。
*サップ:SUP(Stand Up Paddle boarding)。ハワイ発祥のウォータースポーツ。ボートの上に立ちパドルを漕いで水面を進んでいく。