奥能登の黒瓦の集落群おくのとのくろがわらのしゅうらくぐん

「能登には、黒瓦の屋根と下見板張りの伝統的な住居が多く、統一感のある景観と独特の風情を生み出している。黒瓦は、「能登瓦」とも呼ばれ、材料に能登の水田の土を使い、山の薪を燃料にして、七尾市や珠洲市などの農村地帯で生産されてきた。黒あるいは銀黒の美しい釉薬で覆われた能登瓦は、耐寒性に優れるといわれている 。輪島市の黒島(旧門前町)や鵜入などは、能登瓦の民家がまとまって見られる集落の代表である。」(「能登の里山里海」世界農業遺産活用実行委員会)とされ、「能登の里山里海」の景観を構成する要素の一つといえる。こうした景観は、高台から海岸沿いの集落を見渡すことができる奥能登を中心として能登地域一円でみられる。
 「能登瓦」は、「能登半島で多量に生産されていた耐寒釉薬瓦。窯元数は昭和30~40年代が最多。トンネル窯*化で昭和50年代初頭に最多生産量になりましたが、以降は減少。北陸特有の気候風土に根づいた大判の和型49形*で、釉薬(黒・銀黒)のドブづけ*。施工は銅線緊結工法。厚みがあって風、雪に強く、流れの長い屋根にはよく使われます。」(大和製瓦株式会社)とされている。
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みどころ

海に向かって斜面が続く能登半島の海岸線は、奥能登を中心とした地域で高台から集落を隔てて海を見下ろすことができる場所が多い。そうした集落の屋根瓦として黒く光るの能登瓦が使われていると、青い海とのコントラストが美しい。こうした光景については、「能登を訪れてまず目につくのが、民家の「黒い屋根瓦」。陽の光を浴びると、艶やかな瓦の表面がきらきらと光り輝き、その美しい町並みに心を奪われます。どうして能登では黒い瓦が使われているのか。諸説あるようですが、「屋根の上に積もった雪が、早く解けて滑り落ちやすいから」というのが有力な説のようです。外浦で見つけた漁村の風景。能登島の町並み。このほかにも、七尾湾に沿ってドライブするだけで、濡れたように艶やかな黒瓦を目にすることができます。能登の風土には黒瓦が似合う。」(「のとつづり」)とされている。(捧富雄・本康宏史)
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補足情報

*トンネル窯:トンネル窯は横幅2m、高さ2mぐらいの間口で、場所によって温度が違う。少品種大量生産はできるが多品種少量生産には向かなかった。(「窯業の歩み」(株)INAX:)
*和型49形:瓦のサイズを表す。坪(3.3平米)当たりの葺き枚数が49枚になる大きさということで、一般的な瓦では最も大きい。
*ドブづけ:ドブ漬け塗装。塗装物を塗料の中に直接漬け込む塗装法。塗料が行き渡った後、塗装物を塗料から引き上げ乾燥させる。各種ある塗装方法の中でも最も簡単な方法であり、古くから工業用塗装に使われてきた。