卯辰山山麓寺院群うたつやまさんろくじいんぐん

金沢駅の東方、卯辰山の西麓から山腹にかけて約50の寺院が散在している。1599(慶長4)年に前田利家を祀る宇多須神社、1601(慶長6)年には豊臣秀吉を祀る豊国神社(卯辰山王社)を建立、歴代藩主が崇敬した。一方、前田家の祈願所である観音院が広大な境内を中腹に占め、卯辰山は加賀藩の宗教空間として特別なエリアとして形成される。山麓の寺院群は、3代藩主利常の頃この地へ寺を集めたもので、迷路のような道で結ばれた寺々は、それぞれ異なった趣をもつ。境内には多くの知名人の墓や碑が存在し、芭蕉の句碑をはじめ、金沢の歴史・文化に関わった人の足跡を辿る歴史散歩や文学散歩もおすすめ。おもな墓には、関孝和(観音院)、甫庵太閤記の作者小瀬甫庵(普明院)、裏千家の千宗室(月心寺)、辰巳用水の板屋兵四郎・2世以後の嵐冠十郎(蓮覚寺)などがある。
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みどころ

山腹の寺院からは金沢市街の眺めがよく、金沢市街が一望できる。以下、特色のある寺院とそのみどころをあげる。宝泉寺は、この寺の本尊・摩利支天は、加賀藩の祖前田利家公の守り本尊ともいわれている。境内からの眺望も素晴らしく、樹林は保存樹林に指定されている。泉鏡花の小説で「魔神の棲家」とされた五本松も残る。蓮昌寺は、丈六の木造大仏・釈迦如来立像で知られ、山門も金沢市の指定文化財となっている。西養寺の本堂と鐘堂は金沢市の指定文化財。秘蔵の掛け軸「釈迦出山図」は、見つめると釈迦如来の目が動くといわれる。全性寺は、寺院群の中でも飛びぬけて美しい楼門「仁王門」(金沢市指定文化財)が有名で、健康・健脚を願って奉納された大わらじでも知られる。
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補足情報

*ほかにも、泉鏡花が母の面影を偲んだという「摩耶夫人像」の善妙寺、目開き阿弥陀と呼ばれる国の重要文化財「絹本著色阿弥陀三尊来迎図」が寺宝の心蓮寺、本堂内陣は神社様式で、門前の六地蔵に様々な功徳があるとされ、八卦の寺としても知られる来教寺、薬医門や本堂の門の彫刻が見事な本光寺など、魅力的な寺院が並んでいる。
*心蓮社(しんれんしゃ)の近くにあった、九谷焼に大きな影響を与えた木米(もくべい)の春日山窯跡の碑は、近年金沢市内長町に移転された。
*金沢にある3か所の寺町(卯辰山麓、小立野、寺町)は、いずれも台地丘陵上に位置し、元和から寛永年間(1615~1644年)にかけて整備されたという。これらの寺院群を巡る散策コースは、それぞれ「心の道」(卯辰山麓)、「いし曳の道」(小立野)、「静音の小径」(寺町)と呼ばれており、「心の道」はアップダウンが多いが、普段着の金沢を感じさせてくれるとされている。
関連リンク 金沢旅物語(金沢市観光協会)(WEBサイト)
参考文献 金沢旅物語(金沢市観光協会)(WEBサイト)

2023年08月現在

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