東京都美術館とうきょうとびじゅつかん

JR上野駅から徒歩7分の上野恩賜公園内に立地する日本で最も歴史のある公立美術館*1である。その前身は明治末に「日本には美術館が欠けている」という美術界の意見をもとに東京府(現・東京都)が計画した東京府美術館にある。この美術館は北九州の石炭商「佐藤慶太郎*2」の支援を受けて1926(大正15)年に開館した。日本の芸術家の登竜門となる展覧会の開催場所、そして世界の名品や現代美術の紹介の場としての役割を担ってきた。その後、東京都美術館への名称変更、そして1975(昭和50)年に前川國男設計の新館の完成により、多数の展示室を有する日本最大規模の美術館*3となり、日本の芸術振興に貢献してきた。
 現在では様々な芸術・美術団体の公募展と、芸術系大学や高校・専門学校をはじめとする学校教育機関の他、全国規模の公募団体約260団体による展覧会が開催され「公募展のふるさと」として親しまれている。このほか、国内外の名品を紹介する特別展や自主企画展も開催されるなど、一年を通じて様々な作品に出会うことができる。
 展覧会だけでなく、すべての人に開かれた「アートへの入口」となることを目指してさまざまな事業も展開している。
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みどころ

この美術館のみどころは、複数の展覧会が並行して開催されている多彩な公募展にある。その内訳を紹介すると、書、刻字、洋画、日本画、彫刻をはじめとして、山岳写真展や切り絵展、ステンドグラスや七宝焼き、染色織作品、創作手工芸などの工芸、さらには表装・内装作品、ガラス作品展、水石等々、人間が行う創作活動はこんな分野まであるのか、と驚嘆するほど多様なジャンルで開催されている。また、学校教育機関からは芸術系大学の学生作品展やデザイン・インダストリアルアート系の学生作品、そして小中学校生徒作品まで開催されている。
 事前に公募展の開催リストを確認して行ってみるのも良いし、上野公園に来たついでにぶらりと立ち寄って見ても良い。いずれも多様な表現による作品を鑑賞することで芸術を身近なものとして感じることができよう。また、世界の名品を鑑賞したい人々向けに報道機関と共催する特別展が幾つか行われている。
 なお、常設展はないが、敷地内には野外彫刻等の立体作品など12点が常時展示されている。入館は無料なので上野公園内の散策のついでに立ち寄って気軽に鑑賞できる。
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補足情報

*1. 当時、東京国立博物館がすでに1872(明治5)年に開館しており、日本や東洋の古美術を蒐集、展示していた。また大倉財閥の大倉喜八郎の古美術コレクションを展示する大倉集古館が1917(大正6)年に開館していた。東京府美術館はこの両者と異なり、近代的な美術作品の発表の場、ギャラリーとしての役割を期待されていた。
*2. 佐藤慶太郎(1868-1940):北九州で炭鉱経営者として財を成した実業家。芸術文化への支援だけでなく、日本人の生活文化の向上を目指して佐藤新興生活館を設立し、救貧医療、食生活改善、農村生活改善、女子教育などの様々な社会活動を行った。
*3. 延床面積(3万7,748m2)は、国立近代美術館(1万4,439m2)、国立西洋美術館(1万6,654m2)を上回る規模で、2007(平成19)年に国立新美術館(4万9,834m2)が開館するまで日本最大の美術館であった。
関連リンク 東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)(WEBサイト)
参考文献 東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)(WEBサイト)
美術手帖(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)(WEBサイト)
「東京のミュージアム100」芸術新潮編集部編 新潮社
「全国博物館総覧」日本博物館協会編 ぎょうせい

2025年06月現在

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