日比谷公園ひびやこうえん

東京の中心部千代田区にあり、東京メトロ霞が関駅、日比谷駅から徒歩2分、桜田門駅から徒歩5分でアプローチできる。わが国最初の西洋風公園として、1903(明治36)年に開園した。面積は16万1,636.66m2(2025《令和7》年6月現在)、入園口は有楽門、桜門、祝田門、霞門、西幸門、中幸門、幸門、新幸門、日比谷門がある。園内には大噴水を中心に、第一花壇、芝庭広場、大・小音楽堂、テニスコート、日本庭園、日比谷図書文化館、日比谷公会堂*などを配している。樹木が多く、各種施設が完備されている点で、東京都の代表的な都市公園である。
 日比谷公園のある一帯は、幕末までは松平肥前守*をはじめとした大名屋敷があった地域で、明治になってからは陸軍操練所(後に日比谷練兵場と改称)として使用されていた。 その後、政治・経済・文化の中心たる首都東京にふさわしい、近代的な公園の誕生が強く望まれるなか、 本多静六*によって設計、造成された。公園の北東隅、有楽門内は旧江戸城の日比谷見付跡にあたりで、古い石垣が残っている。
 公園となってからも、様々な歴史が刻まれた。関東大震災では5万人が避難し、第二次世界大戦の空襲時には遺体処理、仮火葬場にもなったのだ。そのほか「日比谷焼討事件*」や1959(昭和34)年の日米安保条約の反対運動の中央集会などにも使われた。
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みどころ

面積はそれほど広くはないが、都心部の交通の便もよく、かつ周辺には官庁街やオフィスビルが数多く存在するため、ビジネスの合間に立ち寄ってすがすがしい散策が楽しめる。
 公園の北東部にある日比谷見附跡の石垣の上部に登れば公園全体を望めることができる。日比谷見付跡脇の心字池の水と緑の景観の美しさも格別だ。またその西側には、創建時の姿で保存されたドイツ・バンガロー造りの旧日比谷公園事務所があり、明治期の数少ない近代洋風建築としても必見である。
 心字池西側の第一花壇は、開園当時の姿を残しており、パンジーやバラなどの洋花が咲く。今では珍しくはないが、当時は驚きをもって迎えられたという。西側から眺めると花壇や芝生越しに樹林と立ち並ぶ近代的な高層ビルが目に入り、広場の水平線とビルの縦の線のコントラストが美しい。
 公園の中央部にある松本楼は開園当初からあるレストランで、公園のシンボルでもある首賭けイチョウ*を間近に眺めることができ、特に紅葉時は見事である。9月25日は「カレーチャリティ」が催され、マスコミで報道されることも多い。
 公園の南西側にある日比谷公会堂・市政会館は、建物の縦の柱を強調した近代ゴシック建築。公園の景観と調和する茶褐色タイル張りの色調と荘厳さに驚かされる。公会堂は1960(昭和35)年の浅沼稲次郎暗殺事件の現場でもある。日比谷焼打事件や災害などの記録もあるが、それほどまでに「国民的広場」としての機能を有しているともいえ、この公園の重要性がわかる。
 日比谷公会堂の北西側には日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)は客席側には屋根がなく、開放的な空間となっている。2023(令和5)年に100周年を迎えたが、その間に多くのミュージシャンのコンサートが開催され、数多くの伝説も生んできた。「ロックの聖地」「フォークの殿堂」ともいわれる音楽堂だ。再生整備計画に伴う改修工事が予定されているため、2025(令和7)年9月頃まで現状の姿で利用予定となっている。
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補足情報

*日比谷公会堂:早稲田大隈講堂を設計した佐藤功一の設計で、1929(昭和4)年に完成した。
*松平肥前守:1815(文化11)年~1871(明治4)年。佐賀藩の10代目藩主、藩財政改革をはじめ諸改革に取り組む。大銃製造方を置き、洋式鉄製大砲を日本ではじめて製造するなど、軍備の強化に務めた。
*本多静六:1886(明治19)年~1952(昭和27)年。林学者・公園家として活躍し、日本の「公園の父」とも言われている。日比谷公園をはじめとして、明治神宮、福岡市の大濠公園などを手がけている。
*日比谷焼討事件:日露戦争終結後講和条約に反対する民衆の怒りが爆発し、巡査派出所や電車や教会などを焼き討ちにした事件。
*首賭けイチョウ:樹齢400年以上で幹回りは7mの大イチョウ。以前は日比谷交差点付近に立っており根道路拡張のために伐採寸前であった。公園の設計者の本多静六が「私の首を賭けてでも」と言って移植させたことが名の由来。約450mの距離を25日かけて現在地に移された。
関連リンク 公益財団法人東京都公園協会(WEBサイト)
参考文献 公益財団法人東京都公園協会(WEBサイト)
日比谷公園 歴訪ガイド
「東京都の歴史散歩」山川出版社
日比谷松本楼(WEBサイト)
「日比谷公園 100年の矜持(きょうじ)に学ぶ」進士五十八 鹿島出版会

2025年06月現在

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