太田記念美術館おおたきねんびじゅつかん

JR原宿駅から徒歩5分、教会通りの路地に立地する浮世絵専門の私立美術館である。
 東邦生命保険相互会社の社長・会長を務めていた五代目・太田清藏(1893~1977)の浮世絵コレクションを公開するために、没後の1977(昭和52)年に銀座で開館した。1980(昭和55)年に現在の場所に移転している。太田清蔵は若いときから美術に造詣が深く、昭和初期から長年にわたって浮世絵を蒐集し、また浮世絵研究者とも親交を結んできた。そのコレクションは自ら蒐集した浮世絵12,000点と版本や骨董品200点、浮世絵研究家の長瀬武郎から寄贈された肉筆画と版画約650点、さらに鴻池コレクション*から加わった扇絵(扇面絵)900点などである。
 延床面積777m2の小規模な美術館で、主に浮世絵版画を展示している。
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みどころ

浮世絵が始まった17世紀後半の、祖と言われる菱川師宣(ひしかわもろのぶ)の作品から始まり、全盛期となった18世紀後半の錦絵(多色摺り木版画)*、喜多川歌麿や葛飾北斎、歌川広重の時代から、終焉となった明治時代後期まで、浮世絵の歴史の流れを鑑賞することができる。これらの版画に留まらず、浮世絵関係の版本などの歴史資料も多数収蔵されている。なかでも、貴重な肉筆画500件を所蔵しており、特に、喜多川歌麿や葛飾北斎、歌川広重などの肉筆浮世絵が圧巻である。また、江戸時代の扇絵(扇面絵)を展示することもある。
 常設展示は無いが毎月テーマを変えた企画展を実施しており、常時80~100点の浮世絵を鑑賞することができる。展示室自体は広くはないがゆったりと観賞できる。また、視聴覚室ではビデオによる解説を日曜日に上映、浮世絵や江戸文化に関する講座も不定期で開催している。
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補足情報

*鴻池コレクション:江戸時代、大阪の両替商として財を成した鴻池家の11代目・善右衛門幸方(1865~1931)が蒐集した美術品、骨董品などのコレクション。
*主な収蔵錦絵:「美人読玉章図」喜多川歌麿、「雨中の虎」葛飾北斎、「吉原格子先之図」葛飾応為、「開化之東京 両国橋之図」小林清親、「水仙花」鈴木春信、「大川端楼上の月見」鳥居清長、「喜多川歌麿」冨本豊ひな、「初代市川鰕蔵の竹村定之進」東洲斎写楽、「星の霜当世風俗 蚊やき」歌川国貞、「通俗水滸伝豪傑百八人一個 混江龍李俊」歌川国芳、「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」葛飾北斎、「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」歌川広重
関連リンク 太田記念美術館(公益財団法人太田記念美術館)(WEBサイト)
参考文献 太田記念美術館(公益財団法人太田記念美術館)(WEBサイト)
デジタル浮世絵博物館(立命館大学)(WEBサイト)
「全国博物館総覧」日本博物館協会編 ぎょうせい

2025年06月現在

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