サントリー美術館さんとりーびじゅつかん

東京メトロ・都営地下鉄の六本木駅に直結する東京ミッドタウン内にある私立美術館。その歴史は1961(昭和36)年、サントリーの二代目社長佐治敬三*の時代に、会社創立60周年を記念して丸の内のパレスビル内に開館したときに始まる。開館後に「生活の中の美」を基本理念として生活に密着した美術工芸品を中心に蒐集を開始した。その後、赤坂の東京サントリービルへの移転を経て、2007(平成19)年に東京ミッドタウン・ガレリアに再オープンした。ガレリアの3~4階に約1,000m2の展示室を持ち、ミュージアムショップやカフェその他を含めると約4,700m2の施設である。
 コレクションは、日本の古美術、特に屏風や絵巻、衣装、調度、陶磁、日本・西洋のガラスなど約3,000件で、国宝1件、重要文化財16件、重要美術品21件がある。
 六本木移転を機に「美を結ぶ。美をひらく。」を新たなメッセージとして加え、絵画、陶磁、漆工、ガラス工芸などを中心にした企画展を開催している。
 美術と音楽を中心とした芸術分野において社会貢献を目指す(公財)サントリー芸術財団が運営を行っている。
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みどころ

常設展を設けず、年約5回の企画展のみの開催。そのなかの一環としてコレクション展がある。コレクションの内訳は、漆工(国宝1、重要文化財4を含む)、陶磁器(重要文化財4を含む)、絵画(屏風絵等、重要文化財8を含む)、ガラス(江戸切子、薩摩切子、海外ではエミール・ガレの作品を含む)、染織(江戸時代の能装束他)が中心で、基本理念である「生活の中の美」を体現するコレクションが充実していることがわかる。
 この基本理念は企画展のテーマにも表れており、「過去から現在の吹きガラス」、「江戸の陶芸家の陶器・茶器」、「大名茶人・織田有楽斎の生活と茶道具」、「江戸時代の絵師の絵画と生活」などと関連する展示から、一見すると地味な内容でも生活と美術工芸との関わりを追求していることがわかる。このようにコンセプトが一貫しているだけに、広いとは言えない展示面積でも奥深い世界を垣間見せてくれる美術館である。
 また、生活工芸品から和モダンのライフスタイル雑貨まで扱うミュージアムショップ、老舗の「カフェ加賀麩不室屋」も併設。なお、六本木にはほかにも森美術館と国立新美術館があり、3館で「六本木アート・トライアングル」として割引で巡ることができる。
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補足情報

*佐治敬三(1919~1999):サントリー創業者、鳥井信治郎の次男。1961年にサントリーの社長に就任し、同年に美術館を開館する。サントリー美術館初代館長。