塩原温泉郷しおばらおんせんきょう

塩原温泉郷のエリアは、面積の80%以上が森林地帯。太平洋側と日本海側、また関東地方と東北地方の気候の交差点で、昆虫や両生類、木々や草花などの種類が豊富。北には標高1849mの日留賀岳(ひるがたけ)、南には標高1789mの釈迦ヶ岳(しゃかがたけ)などがあり、山からは無数の沢が流れ、東西に流れる箒川(ほうきがわ)に注ぐ。長い年月をかけて大地を削ってきた箒川の流れに沿って塩原渓谷が続く。
 塩原の年間を通した涼しい気候は野菜の生育に適しており、塩原高原大根をはじめカブやホウレンソウなど、みずみずしくて柔らかさや甘さが特徴的な高冷地野菜が生産されている。また、周辺の那須地方や栃木県一帯も、米・小麦・牛乳・牛肉や豚肉・卵、さらに梨や苺などの食材の宝庫。
 塩原温泉郷は、806(大同元)年に、元湯が発見されたといわれる。古くから塩原十一湯(じゅういちとう)と呼ばれている。東から西へ、大網(おおあみ)・福渡(ふくわた)・塩釜(しおがま)・塩の湯(しおのゆ)・畑下(はたおり)・門前(もんぜん)・ 古町(ふるまち)・中塩原(なかしおばら)・上塩原(かみしおばら)・新湯(あらゆ)・元湯(もとゆ)という湯本が点在し、 約150の源泉から湯が湧き出している。
 明治・大正時代にたくさんの文人たちが訪れ、地元の人々との交流の中で多くの文学作品*を生み出した。まちには文学碑が数多く建っている。また、農村部には室町時代や江戸時代からの歴史を育むスポットも点在する。
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みどころ

日留賀岳(ひるがたけ)や釈迦ヶ岳(しゃかがたけ)などは登山者にも人気の山々であり、箒川に続く塩原渓谷の美しさは昔も今も人々を虜にしている。
 塩原温泉郷のような一つのエリアに、多様な泉質や成分の温泉が湧いているのは全国的にも珍しく、体調や気分などによって湯を選んでゆったりと浸かれるのは魅力。旅館やホテル、飲食店や菓子店などでは、恵まれた環境で育てられた食材を活かして、それぞれ趣向を凝らし心のこもった食を提供している。
 塩原のまちには懐かしさや爽快さを感じる場所が点在。のんびりと歩きながらお気に入りの場所を見つけたい。塩原温泉の人々は昔から訪れる人にも親切に接する気風がある。まちを歩きながら、温泉郷の人たちとふれあうのも楽しい。塩原温泉まちめぐりツアー*に参加してみるのもおすすめ。(溝尾 良隆)
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補足情報

*多くの文学作品:たとえば尾崎紅葉の代表作「金色夜叉」の重要なシーンでは、現存する畑下温泉「清琴楼」が小説の舞台として登場した。
*塩原温泉まちめぐりツアー:温泉街の中心地をガイドと歩いて巡る散策ツアー。普通の観光では行かない場所に行けたり、塩原の文化や歴史などが聞けたり、初めての方でもそうでない方も楽しめる。ガイドは厳しい研修をクリアした塩原マニアの精鋭たち。ガイドの人間味も魅力。予約制(0287-32-4000)で冬季は休業。