日立駅ひたちえき

日立駅は、1897(明治30)年に開業(当時は助川駅)した。当初は日立鉱山の積み出し駅として、その後は日立製作所に関連する貨物取扱などで重要な役割を果たしてきた。現在は貨物駅も含め縮小されているが、1日の乗降客が1万人を超えるJR常磐線の主要駅のひとつである。
 駅は市街地を背に太平洋を前面にして、30mほどの高さの海岸段丘の上に立つ。この立地から果てしなく広がる太平洋を眺望することができるが、この景観を生かし、2011(平成23)年に駅舎が生まれ変わった。デザイン監修は日立市出身の世界的な建築家である妹島和世氏である。軽やかな構造体とするとともに、ガラススクリーンを全面的に使用することによって、広々とした太平洋やまちの風景を遮ることなく開放性を高め、日常的に親しみやすい空間となっている。
 商業施設が建ち並ぶ市街地側の中央口と海に臨む海岸口とを一体的につなぐ自由通路の先端部にある「展望イベントホール」からは、大海原を望むことができ、特に日の出の美しさは素晴らしく、それだけを見るために早朝から訪れる人も少なくない。
 また、「展望イベントホール」に隣接し、L字型に張り出した、眺望の良いボックス内には「シーバーズカフェ」が営業しており、180度のオーシャンビューと軽食を楽しむことができ、絶景カフェとして人気を博している。
 本駅は、「海の眺望を楽しめる駅」としての特徴を最大限に活かし、日立市の玄関口として、「まちの顔」となっているだけでなく、「駅そのものを楽しめる」価値を有している。
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みどころ

全国には海景を楽しめる駅も多いが、ここまで地形を巧みに利用した、ユニークなデザインの駅舎は珍しい。前面が太平洋で視線を遮るものがなく開放感あふれる素晴らしい景観。とくに日の出は見ごたえがある。
 駅舎自体としてもガラススクリーンを多用しているため、明るく清潔感にあふれる。
 ホームは2面3ホームで、改札が狭いため、日立さくらまつりなどイベント時は混雑が激しいことがある。(志賀 典人)
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補足情報

*建物:日立駅は2014(平成26)年に鉄道関連では唯一となる、国際デザインコンペティション「第12回ブルネル賞駅舎部門・優秀賞(Awards)」を受賞しているほか、今までに11の賞を受賞している。