熊野大社くまのたいしゃ

赤湯駅から北へ約5km、町並みを見下ろす丘の上にある。創建*の由緒は不明だが、8世紀にはすでに山岳信仰などの下地があった東北地方に熊野信仰*が浸透しつつあることを背景に、806(大同元)年に平城天皇の勅命により紀伊の熊野三山の神々が勧請され再建されたという。そののち、慈覚大師の天台系などの仏教宗派の影響を受けた古社である。
 境内は広く、入口には樹齢900年といわれる大イチョウがあり、社殿は本殿・拝殿*・神楽殿・考古館などがある。伊勢神宮直伝の大々御神楽*が伝わる。また、祭神がイザナミノミコトとイザナギノミコトであることから、縁結びの神として訪れる参拝客も多い。万灯神輿などが出御する例大祭*は7月24・25日。
 隣接地に双松バラ園*がある。
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みどころ

境内入口には堂々としたイチョウが聳え立ち、境内に入り左に折れると杉林に囲まれて末社が並び、厳粛な気持ちで石段を登ることとなる。石段の途中からは拝殿の茅葺屋根が見え、少し丸みを帯びた見事な曲線を描いておりその荘厳さに驚く。建築年代は江戸末期と、さほど古くはないが、雪国山形にあって修復保全に努めていることがわかる。拝殿、本殿に彫られた彫刻も見事だ。
 太々神楽、夏の例大祭、縁結び祈願「月結び」「かなで」や「三羽のうさぎ」など、行事や催し物も多彩である。(志賀 典人)
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補足情報

*創建:不詳だが、8世紀前半、各地に国分寺が建立された時期に遡るともいわれている。
*熊野信仰:紀伊半島の熊野を中心に自然信仰として始まったものが、その後、密教の伝来とともに山岳信仰とも結びつき、さらに神道や仏教各宗派の影響下、神仏習合が進み、平安時代に全国に広まったと言われる。
*拝殿:唐破風、千鳥破風も茅で葺いた、山形県最古の茅葺屋根で、1787(天明7)年に造営されたといわれている。また、本殿の裏側に彫られた彫刻の中に3羽のウサギがいるとされ、これを見つけると願い事が叶うという伝説が残されている。
*太々御神楽:倭舞・入長舞をはじめとして伝統ある舞楽を行う。
*例大祭:4基の万灯神輿や「御獅子様」の出御、子どもたちがすくすく育つように執り行う神事「梵天ばよい」などが催される。
*双松バラ園:熊野大社に隣接して、市営のバラ園がある。季節は限定されるが340種、6,000本のバラを観賞できる。
関連リンク 熊野大社(WEBサイト)
関連図書 加藤隆久著『熊野大神: 蘇りの聖地と神々のちから』戎光祥出版、2008年2月
参考文献 熊野大社(WEBサイト)
パンフレット「熊野大社」
パンフレット「太々神楽百周年」
『山形県の歴史散歩』山川出版、2011年
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン株式会社

2020年12月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。