花巻温泉はなまきおんせん

JR東北本線・釜石線の花巻駅から北西約7km、背後に山を負い東南に平野を見晴らす台地にある。1923(大正12)年、盛岡の実業家金田一国士(きんだいちくにお)*による台川上流にある台温泉*からの引き湯に始まる。現在は桜や松の並木が整備され、花巻温泉株式会社が経営する4軒の大型ホテル(佳松園、ホテル千秋閣、ホテル花巻、ホテル紅葉館)と旅館が立ち並ぶ、東北を代表する温泉地となった。
 泉質は、単純温泉(58.7℃)、ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉(59.9℃)。
 広大な敷地内には5,000坪(16,529m2)の広さをもつ「花巻温泉バラ園」*がある。バラ園内の日時計花壇は宮沢賢治*の設計である。
 近くの台川沿いには散策道があり、上流には高さ8.5m、幅30mの大きな岩の上を幾筋にも分かれて流れる釜淵の滝がある。
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みどころ

小高い山間に立ち並ぶ近代的な大型ホテル3館は連絡通路でつながっているので、外に出ることなく湯めぐりを楽しめる。大型施設なので、団体、グループ、家族、個人が、それぞれにストレスなく快適に過ごせるのが嬉しい。
 宮沢賢治が設計した南斜花壇跡があることでも有名な「花巻温泉バラ園」はそのスケールが凄い。約450種6,000株をこえる世界のバラが栽培されている。最盛期は5月下旬から7月上旬だが、10月下旬頃まで楽しむことができる。また、春には花巻温泉のバラ園で連なるように咲く桜も見事である。
 一社の経営のため、温泉地全体の景観が美しく整えられている。
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補足情報

*金田一国士(きんだいちくにお):1883(明治16)年-1940(昭和15)年。大正~昭和時代前期の実業家。金田一勝定の養子となり、1921(大正10)年盛岡銀行頭取、岩手軽便鉄道社長などをつぐ。事業をひろげ、国鉄山田線、釜石線の建設を促進した。青森県三戸町出身、旧姓名は矢幅二郎。
*台温泉:平安時代、征夷大将軍坂上田村麻呂*が発見したと伝わる温泉で、南部藩主も訪れた地。台川沿いに約15軒の湯宿が寄り添い建ち並ぶさまは昔ながらの温泉街で、今も十数か所から源泉が湧出している。
*坂上田村麻呂:758~811。平安初期の武将。794(延暦13)年に蝦夷(えぞ)を征討し、797(延暦16)年に征夷大将軍となった。その後、胆沢城(いさわじょう)を造営し、蝦夷地平定に功を残した。
*花巻温泉バラ園:1960(昭和35)年に開園。広さ約5,000坪(16,529m2)の敷地に約450種6,000株をこえるバラが四季折々に鮮やかな色彩と豊かな香りで庭園を彩る。バラの中には同園で品種改良され新品種として認定されたものが12種類ある。
*宮沢賢治:1896(明治29)年~1933(昭和8)年。詩人・童話作家。岩手の生まれ。農学校教師・農業技師として農民生活の向上に尽くすかたわら、東北地方の自然と生活を題材に、詩や童話を書いた。詩集「春と修羅」、童話「風の又三郎」「銀河鉄道の夜」など。