小岩井農場こいわいのうじょう

JR東北本線・東北新幹線盛岡駅から北西約12kmに位置し、岩手山を望む岩手山南麓に約30km2の敷地面積を有する民営の農場。日本最初の鉄道敷設を始めとした数々の鉄道工事で陣頭指揮し、「日本の鉄道の父」よばれた井上勝*が、鉄道事業により美しい田園風景を損なってきたことへの埋め合わせとして、国家公共のためになすべき事業として、小野義真*、岩崎弥之助*に協力を求め、1891(明治24)年に創業したのが始まり。小野、岩崎、井上の名をとって小岩井と名付けた。
 以来、百数十年の歳月をかけて雄大な森と緑の大地をつくりあげ、農林畜産業を守り、環境と共生した事業として、基幹事業である酪農事業をはじめ、種鶏事業、山林事業、観光事業、環境緑化事業、食品事業などを手掛けている。
 観光事業では、農場の中央部分の約40万m2のエリアを「まきば園」として開放し、一周約110mのコースを係員がついてまわる引き馬の乗馬体験、羊の放牧地をのどかに走るトロ馬車、小岩井ひつじショー、バター作り体験など、農場経営に裏打ちされたユニークな体験やイベントを数多く実施している。まきば園内のレストランでの食事や農場で生産された加工品の買物とあわせたレジャースポットとなっている。
#

みどころ

広大な農地が広がり、岩手山を望むことができる絶好のロケーションで、農場ならではの自然や動物と触れ合う時間を過ごすもよし、ひたすら自然のなかでのんびり過ごすもよしの人気のレジャースポット。特にファミリー層が一日中楽しめる場所で、季節毎のイベントも豊富にある。
 農場内には国の重要文化財に指定された建造物も点在する。明治末期から昭和初期にかけて造られた牛舎や倉庫など21棟の建造物の多くが現役であることに驚かされる。「ファームトラクターライド」は、トラクターが牽引する客車で、非公開エリア「小岩井農場100年の森」をガイドが案内するツアー。元は荒地だった場所に植林して森をつくってきたことに驚かされる。また、「小岩井ひつじタイム」は牧羊犬が活躍し羊を集めるショーとして人気である。
 ひとしきり自然のなかで遊んだ後は、園内のレストランで食事し、売店で乳製品などの加工品をお土産に買っていくのが定番の楽しみ方といえる。
 今は牧草を収穫する畑が広がる土地が、かつて牛の放牧地だった頃、明治40年代に、暑さの苦手な牛を強い夏の日差しから守る日陰樹として植えられたエドヒガンの一本桜は、残雪の岩手山を背景にゆったりと枝を広げ、美しい風景として話題になっており、写真の撮影スポットとして人気である。一日、一本桜を眺めて過ごすという大人な時間の使い方はどうだろう。
#

補足情報

*井上勝:1843(天保14)~1910(明治43)年。明治期の鉄道官僚、技術者。長州藩士。1863(文久3)年、イギリスに渡り、ロンドン大学で、化学をはじめ鉄道、鉱山関係の技術を学び、1868(明治1)年帰国。工部省に出仕し、1871(明治3)年に鉄道頭兼鉱山頭となり、その後鉄道関係の要職を歴任。
*小野義真:1839(天保10)~1905(明治38)年。明治時代の実業家。土佐(高知県)宿毛村の大庄屋であったが、維新後新政府につとめ、大蔵少丞をへて土木頭となる。新政府を辞した後、岩崎弥太郎をたすけた。1881(明治14)年日本鉄道会社設立にあたって、発起人のひとりとなった。
*岩崎弥之助:1851(嘉永4)~1908(明治41)年。三菱財閥の2代目の当主。兄の岩崎弥太郎のあとを受けて、1885(明治18)年に三菱社の社長となり、敵対していた共同運輸会社と合併して日本郵船会社を設立。その後も鉱山、銀行、造船など諸事業を発展させ、三菱財閥を確立させた。