鵜の巣断崖うのすだんがい

岩手県沿岸北部、田野畑村島越の南にある。鵜の巣断崖の形成の歴史は北山崎よりも古く、海洋プレート上のさまざまな堆積物などが約1億4,000万年前に大陸プレートに押し付けられ、強い圧力によって極めて複雑に変形した岩石(付加体)からできている。その後隆起し海成段丘が形成された。隆起した海岸が荒波に削りとられて、ほぼ垂直に切り立った崖が形作られた隆起海岸である。
 太平洋に突き出したような地形が特色で、高さ約200mにも及ぶ大規模な断崖絶壁が弧を描いてそそり立つ。断崖が5列に連なる様は、さながら巨大な屏風のようである。南はテーブル状の水尻段丘が続き、北は断崖が幾重にも襞(ひだ)をつくる。断崖の中腹まで延びる赤松の緑と紺碧の海の色が調和している。
 ここから真木沢海岸を経て島越まで約3kmの遊歩道がある。名の由来は中腹にウミウの営巣地があることに因み、鵜の巣断崖と名付けられたとされる。
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みどころ

ほぼ手つかずの自然が残されている豪壮な景勝地だが、駐車場から展望所へと続くウッドチップが敷かれた平坦な道は、子どもや足腰に不安のある方、車椅子を利用する方でも利用できる優しいスポットでもある。潮風に吹かれる木々の音や、鳥のさえずりを聞きながら遊歩道を進むと壮大な鵜の巣断崖の絶景を観賞でき、ダイナミックな景色に自然の力を感じる。
 初夏から盛夏にかけ、やませ*と呼ばれるオホーツク海気団より吹く冷涼で湿った北東風で海霧が発生することがあり、東北地方に幾度も凶作をもたらしたやませが断崖にかかる瞬間は多くのカメラマンが撮影に訪れる。
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補足情報

*やませ:北海道や東北地方、関東地方で梅雨や夏に吹く冷たい北東寄りの風。冷たく湿ったオホーツク海気団からの北東気流で、もともと冷湿なうえ、霧を伴うために日照量が不足し、農作物への被害が大きくなることがある。
*三陸海岸は、太平洋に面する延長約708kmの変化に富んだ海岸線。宮古市から南は極めて入り江の多いリアス式海岸であり、北は隆起海岸で海食崖や海岸段丘が発達していて、対照的な景観を見せている。