夏油温泉げとうおんせん

JR東北本線・東北新幹線北上駅から西北西へ約22km。夏油川上流、栗駒国定公園の北部に位置し、焼石連山の山ふところ標高700mの高地にある。夏油川沿いには、いたるところ温泉が湧出しており、真湯・大湯・滝ノ湯・疝気(せんき)ノ湯・女(め)ノ湯・新太郎の湯など7つの露天風呂が両岸に点在する。「夏油温泉」を含んだ「入畑温泉」、「瀬美温泉」、「水神温泉」の4つの温泉の総称で「夏油高原温泉郷」と称する。泉質は含硫化水素芒硝食塩泉で67℃。
 「ゲトウ」という名前については、アイヌ語の「グット・オ」(崖のあるところ)からきており、冬は豪雪のため利用できなくなるところから、「夏湯(げとう)」と言われ、お湯が夏の日差しでユラユラと油のように見えたので、後に「湯」が「油」になったと伝えられている。
 また、古い文献には鬼にまつわる伝説もあるなど諸説の由来がある。発見も慈覚大師にまつわる説、平家の落人の末裔であるマタギにまつわる説など諸説ありはっきりしていない。
 江戸時代の温泉番付では西の大関紀州の本宮温泉と並んで東の大関(大関が最高位)と記された名湯で、明治の頃までは駒ヶ岳の西郷にあるところから「獄(岳)の場」と呼ばれて栄えてきた。今でも昔ながらの風情を残す。
 焼石岳や経塚山への登山の拠点ともなっている。
 なお、県道の冬季通行止めにより、例年11月から翌春まで宿泊施設は休業している。
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みどころ

ブナ原生林と夏油渓谷のせせらぎに包まれた温泉地である。夏は絶好の避暑地となり、秋は紅葉が渓流を彩る。近代的な温泉宿の建物の奥には、昔ながらの素朴な湯治宿が軒を並べ、自炊の煙が漂う中にのんびりと湯治する人々の姿が見られる。情緒のある温泉宿の風情に、ブナ林や深い渓谷からなる大自然をダイナミックに味わえる露天風呂、まさに秘境といえるロケーションが魅力の温泉である。元湯では温泉巡りが楽しめるが、予約が必要な渓流露天風呂に入るためには、長期滞在がおすすめ。
 夏油温泉駐車場から徒歩で30分ほどの上流には、国指定特別天然記念物の「夏油温泉の石灰華」がある。湧き出た湯が沈着してできた高さ17.6m、下底部の径約25m、頂上部約7mの「天狗の岩」とも呼ばれる巨大ドームで、見ごたえがある(2023年4月現在、遊歩道の一部崩落により立ち入り禁止)。