岩木山いわきさん

津軽平野の南西方にあり鳥海火山帯に属する二重式火山。津軽富士と呼ばれる円錐形の独立峰、標高1,625mの青森県最高峰である。山頂部は中央に岩木山、北に巌鬼山、南に鳥海山の3峰に分かれている。
 岩木山は火山でありその活動の大部分は第四紀洪積世*に行われたと言われているが、最後の爆発は1863(文久3)年であり新しい火山といえる。まず原型になる火山角礫岩の噴出があり、そののち溶岩の流出があって現在の鳥海・巌鬼山などの外輪山を形成した。続いて中央火口丘ができ、これが現在の山頂部にあたる。こうしてほぼ現在の形に整えられたが、その後も噴火はやまず、有史以後の記録は21回に及び、その火口跡が10余ケ所見つかっている。
 古くから津軽平野一帯の人々の信仰をうけ、南東山麓には岩木山神社や高照神社などが建てられている。山頂には岩木山神社の奥宮が置かれており、奈良時代780年*に岩木山頂に祠を祭ったのが始まりといわれている。
 信仰の山として長い歴史をもつだけに、さまざまな登山口をもつ。そのうち岩木山神社の百沢口や嶽温泉の嶽口などが代表的である。 また、1965(昭和40)年に開通した津軽岩木スカイライン*が標高1,247m8合目まで延び、そこからのリフトを利用すれば徒歩30分ほどで山頂に登れる。
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みどころ

太宰治*は小説「津輕」で「津軽富士と呼ばれている1,625mの岩木山が、満目の水田のつきるところに、ふわりと浮かんでいる。………透き通るぐらいに嬋娟(せんけん)たる美人である」と岩木山を表現している。五所川原市、金木町方面の岩木山北側からの美しい姿であろう。また弘前生まれの石坂洋二郎*は「弘前から眺めた岩木山は津軽富士と呼ばれるだけあってまことにみごとである。平地に孤立した山であるから、1,600mの山とは思えないくらい堂々として、思う存分その裾野を伸ばしている」と作品の中でその美しさを賛えている。
 このように岩木山を美しく望める*のは津軽平野の北側の水田地域ならびに十三湖越しの姿や津軽富士見湖と鶴の舞橋越しの姿、弘前城などの丘の上からの姿が代表的であり、これらに加え赤く実ったリンゴ畑の向うに望む草紅葉に覆われた岩木山も見事である。
 登山では津軽岩木スカイラインからが手軽ではあるが、登山そのものを楽しむのであれば岩木神社の百沢口からがお勧めであり、信仰の歴史を体感し急登を登り切った爽快感、達成感は格別であり、途中の登山道からの眺望も楽しめる。山頂からの展望は津軽平野を一望にし、西北には七里長浜、天気のよい日には北海道も望める。
 岩木山で特筆すべきものは、標高1,400m以上で見られるミチノクコザクラ*で、岩木山以外では見られないという貴重なものである。7月下旬にはこの花をはじめ多くの高山植物が開花して華やかなお花畑風景をくりひろげ、登山者の目を楽しませてくれる。
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補足情報

*第四紀洪積世:第4紀は約100万年前。洪積世(氷河時代)と沖積世(後氷河時化)とに分けられる。
*780年(岩木山登山史):山頂に祠の建てられたのが780(宝亀11)年と記されているが、それ以前から登山されていると思われる。平安時代には修験者によって登られ、その後信仰登山がよく行われ、「お山参詣」に象徴されるように、地元の人々は年に1度は登るというほどであった。女子の登山は女人禁制の解かれた明治に入ってからで、一般登山者も増えた。
*津軽岩木スカイライン:4年以上の設計・工事を経て、1965(昭和40)年8月25日に青森県で最初の有料自動車道として開通している。全長9.8キロ、その間69カーブある。航空写真など上空から望むと、規則正しいカーブが連続し美しくもあり、樹林を削り痛々しくもある。小学生からシニアまでクラス分けされた本格的な自転車ヒルクライムの大会「チャレンジヒルクライム岩木山」も開催されている。
*太宰治:1909~1948年 作家。本名津島修治。明治42年大地主の六男として誕生。東京帝国大仏文科卒業後、本格的な作家活動に入り、1933~1945(昭和8~20)年にかけて、次々と佳作を発表した。その文章の底流には鋭敏な感受性がもたらす人間的葛藤と、故郷津軽の風土に根ざすほの暗い頽廃的なものを秘めている。昭和23年、玉川上水で自殺。代表作に『斜陽』『富嶽百景』『走れメロス』『津軽』など。
*石坂洋二郎:(いしざかようじろう)1900~1986年、日本の小説家。青森県弘前市生まれ。「若い人」で文壇に登場。戦後は新聞小説に活躍。「青い山脈」をはじめとする青春物で人気となった。
*岩木山を美しく望める:岩木山を美しく望むには「趣のある風景」弘前市(都市計画課)発行のパンフレットに写真とその位置が掲載されている。
*ミチノクコザクラ:別名イワキコザクラ。岩木山を代表する高山植物で6月~7月頃ピンク色の花を咲かせる。一般的な高山植物のハクサンコザクラの近縁種であり花がより大型である。
関連リンク 岩木山観光協会(WEBサイト)
参考文献 岩木山観光協会(WEBサイト)
Amazing AOMORI(青森県・公益社団法人青森県観光国際交流機構)(WEBサイト)
津輕岩木SKY LINE(WEBサイト)
『青森県の山』いちのへ義孝 山と渓谷社

2023年10月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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