温湯温泉ぬるゆおんせん

弘南鉄道黒石駅の東南約8km、黒石温泉郷*の玄関口にあたり、浅瀬石川沿いにある。昔は湯治主体の温泉で、浴場の廻りには客舎と呼ばれる宿があり自炊しながら2週間ぐらい滞在する湯治客で溢れ、集落内には商店、魚屋、下駄屋、こけし屋、あけびづる細工の籠屋、製材所、映画館まであった。今は湯治客も客舎も減り客舎の跡地に車で訪れる入浴者用の駐車場が3か所設けられている。観光で訪れる人はレトロな街並みをカメラに収めている。また、浅瀬石川の対岸に崖山と呼ばれる山があり施薬観音立像が建立され、手に持つひょうたんから水が出ていたが今は管理する人もなく有志により数回の刈払いが行われている。建立発起人には初代若乃花の名も記されている。1時間程で散策できる。450年以上前片足が傷ついた鶴が傷をいやし飛び立ったところを見てこの湯を発見したと伝えられている。鶴羽立(つるはだて)と名付けられ、のちに熱後湯(ぬるゆ)、ぬくもりを長く保つことから「温湯」、別名「鶴の湯」と呼ばれるようになった。1860(万延元)年、「津軽道中譚」に「三味太鼓の声所々に聞こえ………殆ど世外の一温泉地なるべし」と当時の繁栄ぶりが描かれている。1885(明治18)年内務省日本の名湯に選ばれ、1917(大正6)年には温泉湯(共同浴場)が完成、2001(平成13)年に現在の共同浴場「温湯」が完成した。建物面積433㎡、熱い湯43.5℃、温い湯41.5℃の二つの浴槽を持つ。営業時間AM5:00~PM10:00、料金大人300円、小人100円。
 毎年7月下旬には、温泉に御神体(牛の木像)を入れて無病息災を願う 「丑湯(うしゆ)まつり」がおこなわれる。
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みどころ

温泉街の中心は広場となっており、そこに温湯町会が運営する共同浴場「温湯」がある。この周りを「客舎」と呼ばれる自炊湯治主体の木造二階建ての宿や旅館が立ち並んでおり(2021年現在4軒営業)、昔ながらの町並みを形成している。「温湯」は黑屋根と白壁の斬新なデザインで美しく、早朝から営業しているので朝風呂を楽しめ、その後近くの薬師寺や紅葉の名所「中野もみじ」などの散策も気持ちがいい。
 客舎と呼ばれる宿には内湯を持たないものが多い。このため宿泊客も共同浴場に入りに行くというわが国の伝統的な湯治場景観を残している非常に貴重な温泉地である。湯治客を相手に温泉系こけしの発祥の地ともいわれ、黒石温泉郷は「こけしの里」とよばれている。温泉街の東方の落合温泉には津軽こけし館や津軽伝承工芸館があり立ち寄ってみるのもお勧めである。
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補足情報

*黒石温泉郷:温湯温泉5軒、板留(いたどめ)温泉6軒、落合温泉3軒、長寿温泉1軒の宿など
関連リンク 鶴の名湯 温湯温泉(WEBサイト)
参考文献 鶴の名湯 温湯温泉(WEBサイト)
『鶴の名湯 温湯温泉』パンフレット
『青森県の歴史』山川出版社
『新版 日本温泉地域資産』日本温泉地域学会(編)
『青森県の地名』虎尾俊哉監修 平凡社

2023年08月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。