城ヶ倉渓流じょうがくらけいこく

城ヶ倉渓流は十和田国立公園、八甲田山系の大岳、櫛ケ峰、駒ケ峰に源を発して、陸奥湾に注ぐ2級河川の上流部。渓流の岩壁は、第三紀中新世中頃(およそ1千万年前)の火山活動でできた柱状節理*の深く狭い渓谷である。流れの水は、強酸性で魚は生息しておらず、11月から5月までは数メートルの雪に埋もれる厳しい環境にある。
 以前は酸ヶ湯からの遊歩道があり渓谷を下ることができていたが、現在は崩落が激しく立ち入り禁止となっており、酸ヶ湯の西側国道364号線の城ヶ倉大橋から渓谷の深い谷が俯瞰できる。
 城ヶ倉大橋は長さ360m、高さ122m、青森県の南部と津軽を結ぶ重要な橋として1995(平成7)年に開通したもの。美しいアーチ橋でアーチ支柱間が255mと日本有数の規模である。
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みどころ

城ヶ倉渓流は断崖や奇岩怪岩に深く挟まれ、柱状摂理の渓谷で男性的かつ野性的な躍動美にあふれ、激しい流れやいくつもの滝が渓流美を形作っている。また、ヤマツツジやシラネアオイなどの植物も渓流を彩っており、ニホンカモシカもこの険しい断崖でみかけられるという。
 1922(大正11)年この地を探勝した文人大町桂月*は、渓流の美しさを紀行文「花の八甲田山」で賞賛しており、城ヶ倉大橋のたもとに「嫦娥(じょうが)くらの景は 六方石にあり 入江のふち 磁石のふち」と桂月の碑にきざまれている。六万石などの表現は玄武岩の柱状節理、石柱のさまを詠ったものと思われる。
 特に秋には黄色一色、赤一色の紅葉と美しいアーチ橋が絶好の被写体となる。橋の両側のたもとに駐車場があり、ここから歩いて橋を渡ることができるが、駐車場が広くないためピークシーズンには渋滞で注意が必要。
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補足情報

*柱状節理:マグマの固結冷却に伴う体積の収縮によって生じる多角形柱状の割れ目。
*大町桂月:1869~1925年。明治大正時代の文人、旅行作家。旅と酒とをこよなく愛し後半生は、「行雲流水」や「日本の山水」などを刊行、紀行文家として名声を獲得した。