宗谷丘陵そうやきゅうりょう

宗谷岬の南部の後背地に広がる標高20~400mまでのなだらかな丘陵地帯。今から約1万年前の氷河期に雨水や川水で削られてできた周氷河地形*である。深い谷はなく、なだらかな波のようにうねる形状をしている。明治の中頃までは丘陵全域にわたりうっそうとした森林が生い茂っていたが、相次ぐ山火事によって、今では一面が宗谷岬牧場による牧草地と、ササに覆われた土地になっている。そのため、樹木にさえぎられることなく周氷河地形を眺めることができる。
 この丘陵には50基以上の風力発電のための風車が同じ方向を向いて立ち、特徴的な風景をなしている。2011(平成23)年には、当時の稚内市観光交流課職員のアイデアで、宗谷丘陵フットパスコースの一部区間にホタテの貝殻を砕いて敷き詰めた白い道が作られ、多くの訪問客が訪れるようになった。
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みどころ

宗谷丘陵の中を通る道を車やバイク、自転車でめぐることになる。なだらかに広がる丘陵と、わずかな谷上のくぼみがどこまでも連なる景観は、氷河期に形成されたものだと知れば、地理学や地質学に多少の興味があるものであれば、心が動くに違いない。ここでは牧畜が行われており牛が草を食む姿、のんびり休む姿がさらに北海道らしさを醸し出している。この丘陵は海に張り出しており、その向こう側にオホーツク海を眺めることができるのも景観を特徴づけている。
 遠方に稚内の街、利尻山を望むスポットもある。人工的に作られたということだが「白い道」と名付けられた貝殻を敷き詰めた道は、空の青さと周辺の緑、牧場の薄茶色とのコントラストが非常に美しい。宗谷海峡に飛び込むように進む道を背景にした記念撮影のポイント探しが面白い。またこの丘陵には風車が同じ方向を向いて回っており、大自然の中の巨大な人工物をどう捉えるのかには多様な見解はあるだろうが、この吹きさらし感は北方の気象の厳しさを印象付けている。車で訪れるには道幅が狭く、駐車帯がないため、ここを観光する場合には十分な注意が必要である。自転車で走れば、いっそう自然の素晴らしさを体感できるだろう。天気が良ければ、1時間でも2時間でもこの風景の中に浸っていたいところである。
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補足情報

*周氷河地形:今から2万~1万年前に起こった地球最後の氷河期「ウルム氷河期」に形成された地形。土が凍っては融け融けては凍るという現象を繰り返すうちに傾斜地で流土(りゅうど)現象が起き、斜面の上の土がえぐり取られ下の谷にそれが積み重なって尾根と斜面がなだらかになり、小さい谷が作られた。「周氷河地形」は北海道のいたる所で形成されたといわれているが、開発などによって景観が失われ、その地形を一望できるのは「宗谷丘陵」だけだといわれている。