鰊御殿にしんごてん

小樽駅の北側、直線距離で約5kmの祝津にある高崎岬の高台にあり、日和山(ひよりやま)灯台やおたる水族館に隣接している。ここにある小樽市鰊御殿は、西積丹泊村から1958(昭和33)年この地に移築されたもと網元*の母屋で、間口29m、奥行13m、面積611.9m2の建物。鰊親方田中福松が1898(明治31)年に建築したもので、田中漁場の全盛期には120人の漁夫がこの建物に寝泊まりし、漁期以外でも30人は常住していたという。
 建物の用材は主として「タモ・セン・トド松」などの道産原木約3,000石で、大屋根中央の切妻天窓、伽藍調を帯びた大屋根の庇、脇玄関の庇を支えている象鼻などで、いずれも民家には珍しい建築様式である。
 現在建物内には弁財船、漁場風俗人形の模型をはじめ、沖揚風景・大豊漁図などの絵画、漁具・衣装などを多数展示、規模・用材・構造とともに貴重な存在として道の文化財になっている。
 小樽市内には他に2つの鰊御殿関連の建物、にしん御殿小樽貴賓館と銀鱗荘もある。
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みどころ

小樽市鰊御殿は、鰊大尽と呼ばれた往年の豪壮な原形をとどめており、内装も当時を思わせ、北海道にある移築した鰊御殿の中でも往時を偲ぶ貴重な鰊漁場建築である。高島岬の先端の高台にあり石狩湾の眺めが美しい。
 祝津の小樽市鰊御殿の南約1m、祝津三丁目には「にしん御殿小樽貴賓館(旧青山別邸)」があり、1923(大正12)年、総工費約30億円で完成したといわれる鰊漁大網元の豪邸で、現在はレストランとして活用されている。青山家は小樽祝津の3大網元の1つであり、青山家の漁場建築群は札幌市の「北海道開拓の村」(別掲「北海道開拓村」参照)に移築されている。
 また小樽市街南西端、平磯岬の丘の上、海抜60mには「銀鱗荘」という豪華で美しい鰊御殿がある。余市の猪俣安之丞(いのまたやすのじょう)が3年かけて建築し1900(明治33)年に完成した豪邸で、1938(昭和13)年に現在の場所に移築されたもの。石狩湾や小樽港、小樽市街が一望、現在は料亭、湯宿として活用している。
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補足情報

*網元:漁網・漁船などを所有し、漁師を雇って漁業を営む者。網主(あみぬし)。昔ニシン魚家を番屋と呼んだが、その中でもこの祝津にある網元田中家の番屋は群を抜く規模を誇る。
関連リンク 小樽市(WEBサイト)
参考文献 小樽市(WEBサイト)
おたるぽーたる(一般社団法人小樽観光協会)(WEBサイト)
銀鱗荘(WEBサイト)
小樽貴賓館(WEBサイト)
『小樽市 鰊御殿』パンフレット

2023年12月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。