屈斜路湖畔の温泉くっしゃろこはんのおんせん

北海道東部弟子屈町にある屈斜路湖の東岸に仁伏(にぶし)温泉、砂湯、池ノ湯、和琴温泉が並ぶ。湖畔沿いに、ホテル・旅館・民宿などのさまざまな宿泊施設があるが、ここでの楽しみは、湖岸のどこを掘っても温泉が湧出する砂湯*、岩の間から自然に温泉が湧きだしていて湖畔に露天風呂がある池ノ湯温泉*、和琴半島の付け根に露天風呂のある和琴温泉*での入浴である。
 砂湯は、どこでも砂浜を掘れば、子どもでもたちまちに露天風呂ができる。24時間利用が可能で、無料。宿泊施設も少ないので、キャンパーには人気の場所である。泉質はナトリウムー炭酸水素泉。
 池ノ湯は、古くからアイヌの人々に利用されたという温泉。湯の湧くところを意味するアイヌ語、トウユと呼ばれていた。湖岸の露天風呂は、名前のように直径が25mと大きく、一部が屈斜路湖につながっている。24時間利用可能で無料。泉質はナトリウムー炭酸水素泉・硫酸塩泉。
 和琴温泉は、和琴半島*のくびれにあたる所から温泉が湧出しており、こことオサッペ川の河口付近にあるポント温泉と合わせた呼び方である。和琴はアイヌ語のワッコチが語源で、魚の尾のくびれという意味で、1921(大正10)年にこの地を訪れた旅行作家大町桂月*が和琴の文字をあてた。三日月形の大きな湯船があり、温泉は重曹泉で泉温は60度近くになる。24時間利用可能で無料。泉質は単純泉。
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みどころ

屈斜路湖を間近に眺めながら、自然の中の温泉を楽しむことができるのが、この温泉郡の最大の魅力。
砂湯では、温泉熱で湖水が暖かいため、厳冬期でも凍ることがなく、シベリアから渡ってきたオオハクチョウが群れをなして休憩する姿をみることができる。
 和琴温泉が熱すぎるときには、湖とのつながり部分をふさげば、水圧の関係で温度が下がる。あふれ出た湯が湖水と混じる流出口で入浴するのもよいだろう。和琴半島は秋の紅葉も美しく、一周1時間の自然探勝路を散策するのもおすすめだ。
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補足情報

*和琴半島:屈斜路湖の南から突き出た半島で、屈斜路カルデラ内に噴出した溶岩円頂丘が砂州でつながり、半島となった。先端にはいまでも火山活動を続けるオコヤツ地獄がある。
*大町桂月:1869~1925(明治2~大正14)年。明治から大正時代の詩人、随筆家、評論家。帝国大学在学中から「帝国文学」に新体詩や文芸評論をよせた。1900(明治33)年博文館に入社、「太陽」などに評論を発表。のち各地の山水をたずねて紀行文をかいた。1925(大正14)年6月10日移住先の青森県蔦温泉で死去。57歳。土佐(高知県)出身。