日高のコンブ干しひだかのこんぶほし

浦河町からえりも町にかけた海岸沿いでは、白い砂利を敷き詰めた「干場」が点在し、漁獲されたコンブが天日干しのために並べられる。天然コンブの好漁場として知られるこのエリアでは、7月上旬から一斉にコンブ漁がスタートし、9月下旬、遅いときで10月中旬まで続く。この季節には前浜から数十メートル先の岩礁地帯が漁場となり、漁師たちは「カギ棹」という長い棒にコンブを束ねて引っ掛け、人力だけで一気に引き抜く。1回30〜40分の操業で水揚げされたコンブは、その日のうちに天日乾燥させるために「干場」に運ばれる。ここでは「陸廻り(おかまわり)」と呼ばれる作業員が天日干しを始める。最盛期には、子供も大人も家族総出で昆布干しを行う。漁師たちは、天候を読みながら1日4~6回ほど漁場と浜を往復するという。
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みどころ

襟裳岬から日高に向かう海沿いの道路脇には、駐車場に白い砂利が敷き詰められた空間が頻繁に現れる。堤防から続く広い空間もあれば、家の脇の小規模なものまで、きれいに整地されているのは同じだが、規模はさまざまである。ここが日高昆布の干し場であり、水揚げの季節になれば、収穫されたばかりの長いコンブが規則正しく並ぶ。また、短いものは物干しざおのようなものに掛けられ、風に当たりコンブがひらひらとなびく姿も印象的だ。家族がそろって、コンブを丁寧にひろげ、並べていく様子も目に入る。時間に余裕があるのなら自転車や徒歩で海岸に沿って散策するのもよいが、基本的には移動する車窓からの見学になるだろう。日高山脈が海際まで迫っていることもあって沿岸の平場は限られており、その中の一等地と思われる空間を見つけては干し場があるといった雰囲気も良い。
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補足情報

*日高昆布:正式な名称は「ミツイシコンブ」で、「日高昆布」は通称。北海道産の昆布は松前地方が主だったが、やがて日高沿岸一帯にも生産が広がった。砂利浜の小石の空間はほどよい通気をもたらし乾燥を促すと共に、浜風によりじっくりと昆布にうまみが凝縮される。独特の風味は天日干しでしか出せないといわれている。細く火が通りやすいため調理しやすく、だし、昆布巻き、佃煮、おでん用の昆布として利用される。
*昆布:日本のコンブの約90%は北海道で採れる。北海道の沿岸各域が産地となっているが、各所で漁獲されるコンブの種類は異なる。なかでも商品名に地名を冠した「利尻昆布」「羅臼昆布」「日高昆布」 はよく知られており、特に「利尻昆布」「羅臼昆布」は風味の良い高級だしがとれるという。