ウトナイ湖の渡り鳥うとないこのわたりどり

苫小牧市東部の勇払原野の中にある湖で周囲9km、面積275万m2、平均水深0.6mの淡水湖。美々川、勇払川、オタルマップなどの川がそそぎ、広大な原野湿原の中にある湖沼。川が流れ込むことによって栄養分が豊富となる。これまでに約270種の鳥類の生息が確認されており、毎年9月中旬から12月下旬と、2月下旬から4月上旬にかけてマガンやコハクチョウなどの渡り鳥が飛来する。
 沼には水生植物群落が見られ、周辺にはマコモやヨシの群落、ハンノキ林が広がる。1982(昭和57)年に国指定鳥獣保護区に指定され(面積510ha、全域が特別保護地区)、1991(平成3)年には日本で4番目のラムサール条約登録湿地となった。
 ウトナイ湖の水位は、1960(昭和35)年~1970(昭和45)年代に比べて低下しており、湖岸の陸化が進行している。北西の湖岸域では、ハンノキ林やホザキシモツケ低木林などの樹林が拡大し、湿生草原が減少している。そのため美々川自然再生事業が進められている。
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みどころ

ガン類やハクチョウ類の集団飛来地。9月中旬から12月下旬にかけての秋の渡りのシーズンには、ガン類やコハクチョウなどの渡り鳥が飛来し、ウトナイ湖周辺で休息後、本州の越冬地へと渡りを続ける。湖が氷結する1月上旬から2月中旬までの間は、この地で越冬するオオハクチョウやオオワシの姿が見られる。そして、2月下旬から4月上旬にかけての春の渡りのシーズンになると、繁殖地への移動の途中に飛来するガン類やコハクチョウなどの姿が見られる。
 湖畔の「道の駅ウトナイ湖」に隣接して「環境省ウトナイ湖野生鳥獣保護センター」があり、展望室から湖と鳥の姿が観察できる。また約1.4km北東側にはウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンター*があり、その先の静かな湖岸の観察小屋と草原の観察小屋では野鳥が近くから観察できる。
 湖面の氷が融けはじめるころ、日本各地からマガン数万羽をはじめカモ・ハクチョウ類などの水鳥たちが続々と集まってくる。採餌場から夕暮れ時に帰ってくる数万羽におよぶガン類の群れは迫力がある。北に飛び立つ4月初めまでが、湖の最もにぎわう季節である。
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補足情報

*ウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンター:(財)日本野鳥の会が1981(昭和56)年に国内で初めて設置したサンクチュアリ(聖域)。ネイチャーセンターにはレンジャーが常駐し、自然に関する情報提供や観察会、講座などの普及教育事業、野鳥の生息環境保全のための調査保全事業、野鳥関連グッズ販売などを行っている。