知床半島の海岸しれとこはんとうのかいがん

知床半島は北海道の東北端から北北東に突き出た半島で、長さ約65km、幅は基部で約25km。北側(ウトロ側)はオホーツク海に面し、南側(羅臼側)は根室海峡をはさんで国後島に相対している。知床半島はアイヌ語では「地の涯て」を意味する「シリエトク」と呼ばれている。海岸線は切り立った崖であり、ウトロ側はおよそ20~30mの海岸段丘となっている。岬周辺には人が踏み込む道はなく、段丘の草原上に縞模様の知床岬燈台が立つだけである。
 車で陸域から先端を目指すのは途中で通行規制があるため不可能で、海岸を観光するには、ウトロ港を拠点に運航する遊覧船の利用が一般的である。
 遊覧船からは、岬までの海食断崖に沿って、夫婦滝・カムイワッカの滝など、幾筋もの瀑布、観音岩・ペンギンの鼻・赤岩・メガネ岩・タコ岩などの奇岩怪石などが見られる。またその奥には、知床半島の中央に連なる羅臼岳、硫黄山、知床岳を眺望することができる。また、半島の海食崖の穴や岩盤の割れ目に、ウミウ・ウミネコ・イワツバメ・オジロワシ・クマタカ・ハヤブサなど130種の鳥類が生息する。
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みどころ

ウトロには遊覧船を運航する会社が数社あり、3時間ほどかけて知床岬を往復するコース、約2時間でルシャ湾を折り返すコース、約1時間でカムイワッカまで行くコースなどがある。船の中を歩き回ることができる大型船から、小回りのきく小型船まであり、時間と費用、目的に応じて選択するとよい。いずれも航行中の自然解説が充実している。また、ヒグマとの遭遇率の高さをウリにしているコースもある。断崖と奥に連なる山々を見上げ、眺めているだけでも自然の大きさに驚くのだが、船内の解説に耳を傾け、地質や地形の特徴や、野生動物の状況などに触れることによって、知床の生物多様性の深みを知り、いっそう興味がわくだろう。大規模な柱状節理、水の流れが大地を削りながらたどり着いた先で一気に海に流れ落ちる様子は迫力がある。海岸線近くに設置された定置網の話からは海の豊かさが伝わる。
 ルシャなどの海岸線が平地となっている場所では、ヒグマが見られることもあるが、番屋にとどまり漁を続ける漁業者とヒグマとの関わりから、自然界との付き合い方への気づきがあるかもしれない。何種類ものミズドリが見られるが、中でも黒い体躯に目の周りだけが白く、赤い足をもったケイマフリが飛び出す様子はとても愛らしい。光の加減を考えると午後は順光のもとで断崖をみることができる。知床連山とその麓に広がる森林帯と海の全てが一体となって知床の自然環境がつくられていることを実感できるだろう。