富良野エリアのラベンダーふらのえりあのらべんだー

ラベンダーは地中海沿岸地方原産のシソ科の高さ約60cmになる小低木。蒸留して得る油を香料などに利用する。かつては特用農作物として道内では広い面積で栽培されていたが、今は観光や観賞用・ラベンダー製品原材料として、主に富良野地方で栽培されている。富良野エリアには多くのラベンダー園があり、観賞用のラベンダー栽培とともに、観光用のカフェやショップが併設されている農園も多い。また、開花に合わせたイベントも各所で開催されている。
 1976(昭和51)年の国鉄カレンダーに中富良野町のラベンダー畑が掲載され、全国に紹介されたことが観光利用のきっかけとなった。その翌年には上富良野町東中のラベンダー畑が北海道新聞に掲載されたことから、多くの観光客が訪れるようになった。こうして観光利用がはじまる前、化粧品香料として栽培がたちゆかなくなった1975(昭和50)年に、悲痛な思いで潰す決心をしてトラクターを畑に乗り入れたもののラベンダーが愛おしくてつぶすことができず、苦しくてももう一年頑張ろうとした時のことが「ファーム富田」の歴史に紹介されている。その時の、癒しの植物として、見て楽しむ花としての扉を開く奇跡がおきた畑は「トラディショナルラベンダー畑」として残されており、今もその畑を観賞することができる。
#

みどころ

ラベンダーはやせた傾斜地でもよく育つことから傾斜地に多く植えられている。なだらかな丘陵地形に広がる紫の影が大変美しく、6月中旬に色づき始め、7月中旬に最盛期となる姿は、夏の風物詩となっている。いくつもある農園の中でも「ファーム富田」には多数の観光客が訪れ、十勝岳連峰をバックに富良野一帯を望む風景の中にラベンダーが静かに彩る姿を楽しんでいる。
 また、地域内の道路沿いにも多くのラベンダーが植えられており、この時期の富良野エリアでは、いたるところで乾いて明るい光の中で、ラベンダーの色合いと、香りを感じることができる。
#

補足情報

*ラベンダー栽培の始まり:1937(昭和12)年、曽田香料株式会社がフランスのアントワン・ヴィアル社からラベンダーの種子を入手し、複数の農事試験場で試験栽培を行ったところ、日本では北海道が生育適地とわかり、札幌市郊外などで栽培、蒸留が始まった。富良野におけるラベンダー栽培は、こうした報道記事を目にした上富良野町の上田美一、太田晋太郎、岩崎不二男らが曽田香料と話合い、1948年(昭和23年)より委託栽培を始めたのが発端。その後に北海道の奨励特用作物として全道に広まっていった。
*ラベンダーの観光利用:その後、天然香料の輸入再開や化学技術の発展により合成香料が安価になったことから価格競争に勝てず、栽培面積は減少した。上富良野町では最後まで香料会社との契約栽培が続いたが、1977(昭和52)年に香料会社との取引が打ち切られ、ラベンダーの農業作物としての生産は終わった。1976(昭和51)年の国鉄カレンダーで中富良野町のラベンダー畑が全国に紹介、翌年には上富良野町東中のラベンダー畑が北海道新聞に掲載されたことから、観光客が来るようになる。その後、観賞用にラベンダー栽培が始まり、栽培農家らはラベンダーの生き残りをかけて、土産や域外販売にむけた苗木の栽培・鉢植・切花・ドライフラワー・ポプリ(乾燥花蕾)などの生産に励むようになった。