層雲峡そううんきょう

大雪湖から上川町中心街に向かって流れる石狩川上流域に形成された延長20数kmに及ぶ大峡谷である。両岸には高さ約200mの溶結凝灰岩による柱状節理がみられる。この大峭壁には、雪渓からの流れが多くの滝となって落ち、周囲の原生林とともに雄々しい景観をみせている。なかでも代表的なのは、流星の滝と銀河の滝。流星の滝は落差90mあり、雄滝とも呼ばれている。一方の銀河の滝の落差は120mで、幾筋もに分かれた繊細な姿は雌滝とも呼ばれている。
 峡谷のほぼ中間には、層雲峡温泉がある。1921(大正10)年に文人・大町桂月がアイヌ名の「ソウウンベツ(滝の多い川)」から層雲峡と命名した。
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みどころ

かつて、柱状節理のハイライトは大函(おおばこ)から小函(こばこ)にかけての断崖だったが、道路改良によってこの間はトンネルで通過することになり、バスや自家用車の車窓から断崖絶壁の峡谷を体感することができなくなった。トンネル完成後も旧道は「小函遊歩道・自転車道」として利用されていたが、落石事故により現在は通行止めである。新大函トンネルを抜けたところにある大函からは今も層雲峡らしい景観を眺めることができる。
 この区間以外でも、谷底を流れる石狩川に沿って走る国道から断崖を見上げることができるが、車から降り、ゆっくり時間をかけて層雲峡を鑑賞するには、駐車場が整備されている銀河の滝と流星の滝エリアを拠点にすると良い。2つの滝を見るポイントは川沿いの遊歩道で結ばれている。滝を背にして、対岸の斜面を20分ほど登ったところに2つの滝を眺めることができる双瀑台(標高788m)が整備されており、写真撮影の適地になっている。
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補足情報

*柱状節理の形成過程:現在のお鉢平にあった成層火山が約3万年前に噴火し、それによって発生した火砕流が山の斜面を流れ下り、石狩川の流れる谷を埋め尽くした。層雲峡付近に堆積した火砕流の厚さは150m〜200mに達し、自重の圧力も加わってガラス片や軽石は再溶融して、扁平化、湾曲、変形したものが冷えて固まる際に四角形や六方称形の形となったものが、柱状節理(ちゅうじょうせつり)である。地質的には溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)と呼ばれている。こうした堆積物に覆われていたところを、石狩川が長い時間をかけて削り取り、現在の層雲峡の峡谷となった。
*大函・小函の形成過程:噴火の火砕流によって層雲峡は埋め尽くされ、これによって石狩川はせき止められ、古大雪湖というダムがでた。古大雪湖の強力な水圧が溶岩でできた提を押し破り、長い年月をかけて石狩川が溶岩を侵食し、現在のほぼ垂直に切り立った崖である大函・小函となった。
*滝の形成過程:層雲峡の形成過程では、水量や流速の異なる複数の川があった。中でも石狩川の勢いが大きく、他を圧倒する勢いで流れくだって岩を削り崩落させ、最大で200mほど深く削っていった。一方で侵食する力の弱い川は、川底がわずかに低くなるだけで、石狩川より高地を流れることになり、石狩川と合流する場所には大きな落差が生じた。これが、流星の滝・銀河の滝をはじめとする層雲峡の滝群となった。