旭川市旭山動物園あさひかわしあさひやまどうぶつえん

旭川駅の東側約11km、桜と紅葉で有名な旭山公園の丘陵に位置し、敷地面積約15.2万2、飼育動物点数101種/639点(2023年10月現在)の動物園。
 1967(昭和42)年に日本最北の動物園として開園し、物珍しさもあり人気となったが施設の老朽化とともに徐々に入園者が減少し閉園の危機もあった。しかし理想の動物園を作る夢を貫き、1997(平成9)年に巨大な鳥かごの中を鳥が飛びまわる「ととりの村」を作り行動展示*を中心として施設展開を始める。その後「ほっきょくぐま館」、「あざらし館」など話題の施設が次々と登場し人気の動物園となっていった。2005(平成17)年NHKの番組「プロジェクトX」に取り上げられ、テレビやドラマ、映画などの作品に次々登場して全国区の知名度となった。2007(平成19)年度には入園者数307万人と、恩賜上野動物園に肉薄するに至った。その後さまざまな新しい試みの展示施設を作り出し、「えぞひぐま館」では、施設内に渓流を設け、ヒグマが魚を捕食する姿が見れるかもしれない。
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みどころ

人気が低迷する中でも理想の動物園を目指し努力した飼育員たちの情熱と、歴代園長の行動力に感動を覚える。動物たちがいかにいきいきとした行動をするかを追求し、動物たちの「食べる」「遊ぶ」といった自然の姿を見せるために様々な工夫がなされている。その基本は、「行動展示」と「共生展示*」にある。行動展示では動物たち運動能力や適性を生かすための施設づくりと、餌を食べる姿を見せる「もぐもくタイム」の設定。この時に飼育員による動物の行動のエピソードをガイドするという、ハード・ソフトの工夫がなされている。
 魅力的な動物舎の代表を挙げてみる。
●ペんぎん館 館内では360度見渡せる水中トンネルがあり、ペンギンが飛ぶように泳ぎ回る姿が観察できる。屋外のプールでは岩の上や水の上で遊ぶペンギンたちの姿と共に、屋内のガラス窓から楽しそうに見入る家族連れと、屋外のテラスから見る人々の姿の対比が楽しさを演出している。
●ほっきょくぐま館 巨大プールを設置してあり、飼育員が魚を水中に投げ入れると、岩場にいた巨大な体のほっきょくぐまが餌を追って飛び込む。この時に大きなしぶきが巻き上がるダイナミックな光景がこの動物園の魅力のひとつ。屋内の観察窓からこのとびこみや泳ぎ回る姿を見ることができる。また「シールズアイ」から陸上を歩くほっきょくぐまを真近で見ることができる。
●あざらし館 屋外には漁港をイメージさせる漁船やテトラポットが置いてあり、オオセグロカモメと共生展示されている。屋内では「マリンウェイ(ガラスの円中水槽)」があり、アザラシが上から下へ、下から上へ遊びまわる姿や、円柱の外の人間を観察するユーモラスな光景がみられることもある。この光景がテレビ放映されて大人気になった場面のひとつである。
●おらんうーたん館 飼育舎と、放飼場の高さ17mの塔、その間に渡されたロープをつかみながら渡るオランウータンの迫力ある姿が見られる。飼育員が餌を檻の柵に置くと、その餌を求めてロープを渡っていく姿を真下から観察できる。
●エゾシカの森とオオカミの森 野生ではオオカミはエゾシカが大好物であり、あえて隣接させて配置されている。エゾシカの森では高さ7mの岩山があり餌を置くと体の大きなシカが軽々と上がっていく。オオカミの森では歩き回る姿を「ヘアーズアイ」から近くで見ることもできる。運が良ければオオカミの遠吠えが聞こえることもある。
 こうした施設や演出だけでなく、立地条件の良さや施設と緑のデザインなどの魅力もある。動物園の東側の高台に立つとなだらかな下り斜面に緑と花と動物舎が調和し、さらに遠方に旭川の市街地が展開し、開放的で美しい景観をのぞむことができる。
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補足情報

*行動展示:動物の野生の能力を最大限に引き出す展示方法。動物それぞれの習性や特徴が研究され、趣向を凝らした環境が作られている。
*共生展示:自然界で々生息域にいる動物を一緒に展示する方法。野生下に似た緊張感が生まれ、動物本来の生命力を引き出す。
関連リンク 旭川市旭山動物園(WEBサイト)
参考文献 旭川市旭山動物園(WEBサイト)
『全国博物館総覧』公益財団法人日本博物館協会
『レジャー&サービス産業展2021』 綜合ユニコム株式会社
『旭山動物園の奇跡』SPA!編集部
『るるぶ 札幌’21』JTBパブリッシング

2023年12月現在

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