天売島の海鳥てうりとうのうみどり

天売島は北海道の日本海側に面した羽幌町の羽幌港の西北西約28km離れたところに位置する島内一周約12km、島民約270人の島である。オロロン鳥の名で知られる絶滅危惧種のウミガラスの国内唯一の繁殖地であり、他にも約80万羽が舞うというウトウ、ケイマフリやウミウをはじめとする日本有数の海鳥繁殖地、海鳥の楽園ともいわれている。西海岸の地形が百数十メートルの断崖絶壁であるため、肉食獣を寄せつけないこと、もともと天敵となるヒグマ、キツネ、イタチなどの獣がいなかったこと、近くを対馬暖流が流れるため餌となる魚が豊富であったことなどから、海鳥の繁殖に適していた。
 一方で、オロロン鳥*は、餌資源の減少や漁網による混獲、ハシブトガラスとオオセグロカモメの存在などにより、一時期は繁殖ゼロが続いたため、保護・保全活動が行われ、現在は繁殖、ヒナの巣立ちが確認されるようになった。
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みどころ

天売島内を歩いて巡ると約3時間を要する。島の西海岸沿いには、いくつかの展望台が整備されているので、そこから海鳥の営巣などを観察することができる。観音岬展望台は、かつてはウミネコの繁殖地として知られ、ここからは今も数多くの海鳥が生息する海から立ち上がる断崖絶壁を一望できる。海鳥観察舎からも、切り立った断崖にウミウやオオセグロカモメなどの営巣の様子がみられる。赤岩展望台からは、オロロン鳥繁殖地としての天売島のシンボルである海から直立した48mの垂直の岩である赤岩を望む。また、周辺の斜面には世界最大のコロニーを形成するウトウの巣穴を多数見ることができる。
 5月から7月の繁殖期には、海中を泳ぎ回ってヒナに与える餌を捕獲したウトウが、日没と同時に帰巣する姿が観察できる。こうした壮観な風景は、船便を考えると島内に宿泊しなければ見ることはできない。オロロン鳥を観察するにはガイドツアーに参加すると良い。5月から7月の初旬にかけて、運が良ければみられるという。自然環境が魅力の島であり、海鳥の生態や、島民の暮らしぶり、歴史などもあわせて知るにはガイドツアーに参加するのもよいだろう。
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補足情報

*オロロン鳥(ウミガラス):正式にはウミガラスだが、鳴き声が「オロロン」と聞こえたところからオロロン鳥と呼ばれている。体調が40cmほどで、立ち姿がペンギンに似ている海鳥である。夏羽は頭部から頸部、上面は焦げ茶色で、胸部・腹部は白い。冬羽は顔が白い。1960年代には約8千羽が飛来したと推定されており、他にも北海道東部のユルリ島、モユルリ島をはじめとする道内各地で繁殖が確認されていた。その後急減し、現在唯一の繁殖地である天売島でも、2002(平成14)年には13羽しか飛来せず、2004~2007(平成16~平成19)年にここを巣立ったヒナは0羽だった。その頃から環境省などが、スピーカーを設置してウミガラスの鳴き声を鳴らしたり、鳥の模型「デコイ」の設置などの自然再生事業に取り組み、現在は繁殖が確認されている。