上の湯温泉かみのゆおんせん

上の湯温泉は函館市の北西方面に位置する八雲町の温泉地。八雲の中心地から約30km離れた標高約70mの山の中に四方を緑に囲まれた落部(おとしべ)川上流にある。昔ここを発見したアイヌの人々は河畔の岩壁に浴槽を設けていたという。
 江戸時代後期の1846(弘化4)年には松浦武四郎*が入浴し、全国に紹介されたという。また1868(慶応4・明治元)年には榎本武揚*の幕軍の負傷者が湯治して効果があがったといわれている。
 温泉施設は「温泉旅館銀婚湯」と、「パシフィック温泉ホテル 清龍園」の2軒がある。銀婚湯は1925(大正14)年大正天皇銀婚式当日、新たにさく泉したことにちなんだものであるという。
 付近には車滝・白糸の滝・谷別峡谷などの渓流断崖があり、新緑・紅葉時のハイキング、釣りに親しまれている。
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みどころ

銀婚湯は1927(昭和2)年に開業した小規模老舗温泉旅館。5本の源泉を所有し、湧出量も豊富で、内湯は横幅17mもある気持ち良い大岩風呂(男湯の渓流の湯)で窓も広く開放的である。日帰り入浴の露天風呂(男湯)は緑に包まれ、渓流の音を楽しみながら入浴できる。庭園の敷地面積は16,528m2と広く、その広い敷地に落部川が流れ、吊橋や散策路が設けられている。散策路に沿って宿泊者専用の貸し切り露天風呂が6つ設置されている。かつらの湯・もみじの湯・トチニの湯・奥の湯 トチニの湯・どんぐりの湯・杉の湯の個性ある雰囲気の露天湯廻りも可能。
 清龍園は1951(昭和26)年に開業した近代的な温泉旅館。地下120mから98度の高温で自噴する温泉を持つ独特な温泉。露天風呂は庭園風で開放的である。
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補足情報

*松浦武四郎:1818~1888年。幕末における蝦夷地(現在の北海島と国後、樺太)を精力的に現地調査を行った。蝦夷地の地理やアイヌの生活を記録しており、蝦夷地に対する様々な提言も行っている。武四郎の著書はアイヌ側の視点を重視して記されている。
*榎本武揚(えのもとたけあき):江戸幕府直轄の海軍教育機関で蘭学や航海術を学び、5年間オランダに留学。幕府海軍副総裁となる。旧幕府軍を率いて「蝦夷共和国」樹立を目指し、五稜郭に立てこもったが降伏。東京の牢獄に2年半投獄されたが釈放され、その後明治政府で要職を歴任した。