智積院ちしゃくいん

京阪七条駅から徒歩10分、七条通の東の突き当たり、東山の阿弥陀ヶ峰の麓にある。真言宗智山派の総本山の大寺院。智山派は大本山として成田山新勝寺・川崎大師平間寺・高尾山薬王院、別格本山として高幡山金剛寺・大須観音宝生院があり、末寺は全国に3,000余を擁する。
 智積院はもと紀州根来寺(ねごろじ)の塔頭だった。真言教学を学ぶ学問所として隆盛をきわめたが、1585(天正13)年、根来寺は豊臣秀吉によって全山焼き払われた。当時、智積院の学頭だった玄宥(げんゆう)僧正は難を逃れ、のちに京都東山で復興を図った。1601(慶長6)年、徳川家康から豊国神社境内の坊舎と土地が与えられ、名実ともに寺を再興。さらに豊臣家の滅亡後、秀吉が長男鶴松を弔うために建立した祥雲寺を拝領し、境内伽藍の拡充整備がなされた。以来、徳川氏の庇護を受け、寺運は隆盛。真言宗の教学の寺として全国から学僧が集まり、特に7世運敞(うんしょう)は諸学に通じた著名な住持であった。
 現在の金堂は1975(昭和50)年、講堂は1995(平成7)年の再建。ほかに明王殿(不動堂)・密厳堂(開山堂)・大師堂・大書院・宸殿などがある。2023(令和5)年4月に新築された宝物館には、長谷川等伯*の「楓図」、息子久蔵の「桜図」をはじめとする国宝の障壁画を収蔵、展示する。ほかに国名勝の庭園*、2008(平成20)年に奉納された講堂の襖絵*もみどころ。また寺内に現代的な宿坊の智積院会館がある。
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みどころ

2023(令和5)年4月に新築された宝物館にはぜひ訪れてほしい。ここには日本の障壁画の代表作として知られている長谷川等伯の「楓図」、息子久蔵の25歳の作の「桜図」をはじめ、「松に秋草図」や「松に立葵図」など、長谷川派の障壁画(国宝)が展示されている。これらの絵はかつて祥雲寺の客殿を飾っていたもの。
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補足情報

*長谷川等伯:1539~1610。桃山時代の絵師。長谷川派の祖。狩野派に学び、さらに宗元画を習い、古典的水墨画を復興した。花鳥画や人物画にもすぐれ、代表作に「松林図屏風」がある。
*庭園:名勝。大書院の東面にある。祥雲寺のころに作られたものを、1674(延宝2)年に運敞(うんしょう)僧正が修築しており、江戸初期の作風がみられる。中国の廬山と長江を模したといわれ、石橋より奥の方は自然石のみを用いて刈込を主体とし、深山の中にいるような雄大さをかんじさせる。滝が落ちる正面は、江戸時代に修築されたもので、石組みと植え込みとが交互に並び、洗練された美しさが表現されている。植え込みにツツジやサツキが多く、開花期の5月下旬はみごと。
*講堂の襖絵:奉納された60点の襖絵の作者は、東京芸術大学名誉教授の田渕俊夫である。「日本の春夏秋冬」を題材にした墨絵は、中国和紙に墨と水だけで描かれた。
関連リンク 総本山智積院(WEBサイト)
参考文献 総本山智積院(WEBサイト)
「総本山智積院」智積院発行パンフレット
「京都府の歴史散歩 中」

2025年05月現在

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