永青文庫えいせいぶんこ

文京区目白台にある私立美術館。都電荒川線早稲田駅より徒歩10分、東京メトロ江戸川橋駅・早稲田駅から徒歩15分にある。旧熊本藩主・細川家に伝わる美術工芸品約6,000点と、歴史資料88,000点を所蔵している。永青文庫*1はこれらを管理保存・研究・一般公開している。
 美術館の所在地は細川家の下屋敷跡で、1930(昭和5)年に建てられた旧細川侯爵家の家政所を展示施設としている。また、同じ下屋敷跡には、文京区立肥後細川庭園、及び学生寮・和敬塾(旧細川護立邸)が所在する。
 永青文庫は1950(昭和25)年、第16代当主・細川護立(もりたつ 1883~1970)によって設立された。護立は旧侯爵、貴族院議員であったが多くの美術品を蒐集するとともに日本の近代美術界への支援を行ってきた人物として著名である。1972(昭和47)年から第17代当主・細川護貞(もりさだ)により一般公開され、2005(平成17)年には展示室が拡大されるとともに、熊本県立美術館にも「細川コレクション永青文庫展示室」が設けられている。
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みどころ

コレクションは大きく二つに分かれる。一つは、細川護立の蒐集品で、中国美術(陶磁器、仏像等)、禅画や墨跡(白隠・仙厓など)のほか、護立が支援した横山大観・下村観山・菱田春草などの近代日本絵画が挙げられる。もう一つは、細川家に代々伝わってきた甲冑や刀剣等の武具、茶道具、書画、調度品、古文書などである。
 永青文庫では国宝8件、重要文化財35件*2を含む膨大な収蔵品のうち、テーマごとに展覧会を開催している。
 ここでの見どころは、100点以上収蔵されている漢時代から清時代までの中国陶磁であり、特に唐三彩と言われる彩色豊かな出土品が素晴らしい。また、武具や調度品、茶道具、書画なども見ごたえがある。歴史を感じさせる建物に入ると、2階から4階までが展示室となっており、古き良き洋館の雰囲気のなかで美術品を楽しむことができる。
 なお、美術工芸品の一部は熊本県立美術館に、歴史資料の多くは熊本大学付属図書館に寄託されて展示や研究に供されている。
 永青文庫は住宅街のなかにあるため、休憩場所が少ない。そこで、永青文庫に隣接する文京区立肥後細川庭園に入ると良い。ここでは池泉回遊式の庭園を散策した後、細川家の学問所として使われていたと言われる松聲閣(しょうせいかく)を見学することができる。
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補足情報

*1.永青文庫:「永青」の由来は、細川家の菩提寺である永源庵(建仁寺塔頭、現在は正伝永源院)の「永」と、細川藤孝の居城・青龍寺城の「青」からとられている。
*2.主な国宝、重要文化財の内容:
・国宝(全8件)
 「金銀錯狩猟文鏡」 中国・戦国時代(前4~前3世紀)
 「時雨螺鈿鞍」 鎌倉時代(13~14世紀)
 「太刀 銘 豊後国行平作(古今伝授の太刀)」 平安~鎌倉時代(12~13世紀)
・重要文化財(全35件)
 菱田春草「黒き猫」 明治43年(1910)
 「菩薩半跏思惟像」 中国 北魏時代(6世紀前半)
 「三彩宝相華文三足盤」 中国 唐時代(7~8世紀)
 黄庭堅「伏波神祠詩巻」 中国 北宋時代 建中靖国元年(1101)
 「織田信長自筆感状(細川忠興宛)」 (天正5年〈1577〉)10月2日
 「長谷雄草紙」 鎌倉~南北朝時代(13~14世紀)
関連リンク 永青文庫(公益財団法人永青文庫)(WEBサイト)
参考文献 永青文庫(公益財団法人永青文庫)(WEBサイト)
熊本大学 永青文庫研究センター(国立大学法人熊本大学永青文庫研究センター)(WEBサイト)
「全国博物館総覧」日本博物館協会編 ぎょうせい
「細川家の700年 永青文庫の至宝」 細川護熙、竹内順一 新潮社

2025年06月現在

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