上野三碑(金井沢碑・山上碑・多胡碑)こうずけさんぴ(かないざわひ、やまのうえひ、たごひ)

群馬県下にある金井沢碑・山上碑・多胡碑という平安時代より古い3つの碑をいう。それぞれの碑には覆堂が立っているが、一定時間の照明でのぞき窓から見ることができ、またテープによる解説を聞くことができる。
<金井沢碑>
 根小屋駅の南西、小高い丘の中腹に立つ。高さ1.1m、幅0.7m。碑面には726(神亀3)年、群馬県下賛郷の豪族三家の子孫が、先祖の供養と一族の繁栄を祈って建てた石碑で、古代東国での仏教の広がり、家族関係、行政制度の実態などを知ることができる。
<山上碑>
 西山名駅の北800m、草の生い茂った丘陵上に立つ。681(天武天皇9)年の建立。碑は高さ1.1m、厚さ0.5mあり、碑面には放光寺の僧長利が母黒売刀自の生い立ちを記した53字が刻まれている。碑の東側には、もともと黒売刀自の父の墓で、黒売刀自が追葬された古墳がある。石室は石を積み上げてできており、玄室の奥壁には馬頭観音が安置されている。古墳も特別史跡。
<多胡碑>
 吉井駅の北東、県道高崎・吉井線から600mほど入った広場に立つ。碑の高さ1.29m、幅69cm。角の石柱の上に90~95cm四方の笠石がのり、711(和銅4)年に戸数300戸の多胡郡を置き、羊氏に郡司を任命したという内容が刻まれている。日本三古碑*の一つに数えられ、古代文化を知るうえで貴重な史料となっている。
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みどころ

比較的近接したエリアに日本の国づくりや日本語の成立や文化に関する三碑がほぼ完全な形で残っていること、また、戦後貴重な碑を守るため、地域の人たちが苦労して保護・保存してきたことが特筆される。
 金井沢碑は碑文から当時の行政制度の様子、現在の「群馬」の文字が初めて確認されている。山上碑は完存する碑としては日本最古のものであり、その形状から朝鮮半島の新羅の石碑と類似しているため渡来人との関係があると推測されている。多胡碑は中央政府からの命令が記されており、当時の政治制度や命令通達が記録されている。こうした事実が残されていることが貴重である。
 2017(平成29)年にユネスコ「世界の記憶」に登録された。
 多胡碑に隣接して多胡碑記念館があり、ここでは三碑のレプリカとともに、詳しい解説が展示されているので、まずはこの記念館で事前の知識を得てから、それぞれの碑に回ることが望ましい。
 上毛かるたでは「昔を語る 多胡の古碑」とうたわれている。(林 清)
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補足情報

*日本三古碑:日本各地に点在する古代碑のうち極めて重要とされている碑。多胡碑、那須国造碑(栃木県)、多賀城碑(宮城県)をさす。
関連リンク 上野三碑(高崎市教育委員会事務局文化財保護課)(WEBサイト)
参考文献 上野三碑(高崎市教育委員会事務局文化財保護課)(WEBサイト)
パンフレット「上野三碑」(高崎市教育委員会、2017年10月)
パンフレット「上野三碑(中学生用)」(高崎市教育委員会、2016年3月)
パンフレット「多胡碑記念館」

2020年04月現在

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