磯節全国大会いそぶしぜんこくたいかい

「磯で名所は大洗様よ・松が見えますほのぼのと」の名文句と尻あがりの口調で知られる磯節は、その起因は明らかでないが、大洗や那珂湊の漁師たちが舟端をたたきながら、荒海と岩礁と波涛が作りだす景色のおもしろさを唄ったとも伝えられる。明治になって芸者置屋の主人矢吹万作や俳諧宗匠の渡辺竹楽坊が大洗の祝町の芸妓に三味線にのせ唄わせ、座敷唄にふさわしい民謡になったという。全国に広まった理由の一つは、明治末から大正期に活躍した水戸出身の横綱常陸山が磯節をこよなく愛し、鍼灸師で磯節の名人だった関根安中を各地の巡業に帯同させ歌わせたことだともいわれている。
 磯節全国大会は、磯節の普及と保存伝承を図るとともに、磯節の発祥の地水戸市・ひたちなか市・大洗町を全国に紹介することを目的として、毎年2月上旬に開催される。この大会では一般、80歳以上の寿、小学生から中学生までの少年少女の3部に分かれ、歌声と技量を競う。例年、予選会(開催地、大洗町またはひたちなか市)には400人ほどの参加者がおり、一般の部では上位30人が決戦会に進出し、寿や少年少女の部では予選会の上位者数名が決戦会の場(水戸市)で歌声を披露する。
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みどころ

江差追分などともに日本の民謡を代表する唄。全国大会では、磯の香りや波の音が浮かんでくるようなゆったりした優雅な歌声と素晴らしい技量を聴くことができる。(志賀 典人)