薬研渓流やげんけいりゅう

下北半島の北側中央部、薬研温泉を中心とした大畑川上流の約2kmにわたって広がる、滝、渕、岩などの美しい渓谷である。清流を原生林がおおい、遊歩道もあり、新緑、紅葉時にはすがすがしく自然散策や森林浴、バードウォッチングなどが楽しめる。
 渓流沿いには緑に包まれた薬研温泉、奥薬研温泉がある。温泉の湧出口の形が漢方薬をすりつぶす器具の薬研*に似ていることが、名の由来といわれる。大阪夏の陣で敗れた豊臣方の武将・城櫓大内蔵佐兵衛によって1615(元和元)年に開かれたと伝わる。また温泉が別名「かっぱの湯」と呼ばれる由来は、恐山を開いた慈覚大師がこの地でケガをした際に河童に運ばれて傷を癒したという伝説に基づく。
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みどころ

渓流の見どころは、薬研温泉から奥薬研温泉への途中にある大滝覆道の大滝や上流の乙女橋のつり橋、奥薬研橋周辺である。渓流の周辺はうっそうたるヒバやブナ、カエデなどの原生林で、特に紅葉の頃は見事である。
 奥薬研橋周辺には大畑ヒバ施業実験林があり、渓流の左岸には1968(昭和43)年頃まで蒸気機関車で丸太を運んでいた実験林森林鉄道跡のレールが残されて薬研渓流遊歩道となっている。軌道の途中にはすべて人の手で石を削り掘った森林鉄道のトンネルも残る。
 奥薬研温泉には2つの露天風呂「かっぱの湯」があり、渓谷沿いにある「夫婦かっぱの湯」は薬研渓流を間近に眺められる。建物に隣接して足湯もある。
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補足情報

*薬研:漢方医が用いる生薬(しょうやく)を粉末化するための道具。細長い舟形で断面がV字形をした臼(うす)の部分と、そろばん玉を平たくして軸を通したような磨(す)り具とからなる。