美瑛の丘の農村風景びえいのおかののうそんふうけい

大雪山十勝岳連峰のすそ野に位置する、南方の富良野盆地と北側の上川盆地を分ける丘陵地帯の風景。十勝岳の噴火に伴い押し寄せた溶岩や、降り積もった火山灰により形成された傾斜地が小さな河川によって浸食されてできた地形で、美瑛川などの河川がつくる幅の広い谷床には水田が開けているのに対し、大きくうねる幾重にも連なった丘は馬鈴薯・ビート・小麦などの畑になっている。特に美瑛の西に広がる丘陵地帯は、縫い合わせた色違いの布地に見立てて「パッチワーク」とよばれ、遠くに大雪山系の山並みが見える景観の良さから、ポプラの木をはじめ数々のCMロケ地も点在する観光名所となっている。また、この丘陵地には広域農道を始めとした幾筋もの道が走り、パッチワークの路とよばれている。畑がパッチワークのように見えるのは、同じ土地に同じ作物を繰り返し栽培すると土地が痩せる連作障害を防ぐために、栽培期間や収穫時期の異なる、ジャガイモ、小麦、豆類、ビートなどを順に植え替えているためである。
眺望箇所として「北西の丘展望台」「新栄の丘展望台」「千代田の丘展望台」などがあり、大雪山連峰を遠景にした美瑛の丘を一望できる。
 美瑛の丘が全国的に有名になったきっかけを作ったのは風景写真家の前田真三である。前田が1971(昭和46)年7月に美瑛を訪れたときに、風景に驚愕し、それ以降も美瑛に通って撮った写真が全国に知らせることになった。美瑛の丘のシーンは、「ケンとメリーの木(1972年日産スカイラインCM)」、「マイルドセブンの丘(1978年JTマイルドセブンCM)」、「セブンスターの木(1976年JTセブンスターパッケージ)」、「パフィーの木(1997年ドラマ「ワイルドで行こう」)」などのポスター、CM、映画、ドラマの中で登場した。
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みどころ

美瑛の丘のあるエリアは、美瑛市街地の北西部、CMやドラマに使われた丘にある1本木などがある「パッチワークの路」エリアと、市街地南東に拓真館、三愛の丘などが点在する「パノラマロード」エリアの二つに分けられる。「パッチワークの路」エリアには「セブンスターの木」「マイルドセブンの丘」「ケンとメリーの木」などのよく知られた眺望ポイントだけでなく、標高の高い位置からパッチワークの路全体を見渡せるような開放感のある見晴らしの良い絶景スポットも点在する。車やバイクによる移動が一般的だが、美瑛の市街地で借りた自転車にのって周遊する観光客も多く見かける。この風景の中に身をおき、ゆっくり時間をかけながら自分の好きな風景を探すのも良いだろう。多くの人が頻繁に訪れるような場所には駐車場が整備されているが、路上駐車となるところもある。交通のルールだけでなく、農地への立ち入りなど、マナーには十分な配慮が必要である。畑の作物の色づきがつくるパッチワークの景観が美瑛の丘の代表的なイメージだが、雪に埋めつくされた中に立つ木々の様子も素晴らしく、季節ごとに自然が織りなす風景が楽しめる所である。景観に溶け込むようにデザインされた個性的なペンションなども多く、こうした施設に宿泊すると、いっそう美瑛の自然が身近に感じられるだろう。